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2012年11月19日掲載

「脂肪肝について」


 人間ドックの腹部エコー検査で、肝臓の脂肪沈着を指摘され、脂肪肝と診断される方が増えているようです。

 正常な肝臓でも脂質を含んでいますが、組織学的に肝細胞の10%以上に脂肪滴(球状の脂肪)が見られれば、脂肪肝と診断できます。

 脂肪肝の発生頻度は健診受診者の20〜30%とみられます。男性が女性よりも多く、女性では閉経後(45歳以上)に急増します。原因を考えると、わが国の脂肪肝はアルコールと過栄養によるものがほとんどです。

 アルコールによる脂肪肝患者はそのまま飲酒を続けていると、肝障害が進みアルコール性肝炎、肝線維症を経て肝硬変に移行してしまいます。アルコールを禁止することで肝機能は改善します。

 一方、アルコール以外の原因で生じる非アルコール性の脂肪肝は過栄養性で肥満を伴っていることが多いようです。そのまま放置していると、肝機能異常(AST、ALT、γGTPの上昇)を来し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といわれる慢性肝疾患に移行します。

 その治療としては食事療法によるダイエットと運動療法が柱になります。食事療法は総カロリーを制限した栄養バランスの良い食事を、規則正しく取ることが基本です。野菜などの食物繊維は糖質や脂質の吸収を抑える効果もあります。一方、極端な糖質制限はかえって脂肪肝を増悪させるので注意が必要です。遅い時間の夕食になるときは、主食(米、パン、イモなど)を控えめにしましょう。

 最近、予後良好とされていたNAFLDの中で、肝細胞の障害が強く、将来的に肝硬変、肝がんへの進展が懸念される非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の存在が注目されています。人口の約10%がNAFLDで、そのうち10%くらいがNASHだといわれていますので、人口の約1%がNASHを発症すると考えられます。

 NASHとNAFLDは採血データだけで区別するのは困難なことが多く、その鑑別法としては長崎のグループが発表した「N Score」があります。肝機能異常を有する脂肪肝患者で、(1)女性(2)65歳以上(3)2型糖尿病(4)高血圧−の4項目のうち2項目以上あると、NASHによる肝線維化の可能性があり、専門医の受診が必要とされています。

 生活改善による肝機能異常の改善が見られない場合や、血小板数の低下がある際にも注意が必要でしょう。

 NASHはメタボリックシンドロームとの関連が強く、インスリン感受性の低下が発症の一因とされています。従ってNAFLDと同様に、栄養バランスの良い食事によるダイエット、有酸素運動が有効です。

 NASHは肝臓内に鉄が沈着しやすく、過剰な鉄沈着はフリーラジカル産出を高進して炎症を持続させるため、定期的に血液を抜く瀉血(しゃけつ)療法や鉄制限食が推奨されます。

 肝臓への脂肪沈着だけでは病気とはいえませんが、肝機能異常が出現してきた場合はダイエットと運動療法を心掛け、医療機関にも相談してみましょう。

(長崎市江の浦町、有冨内科医院 院長  有冨 朋礼)

 

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