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2012年12月3日掲載

「RSウイルス感染症」


 RSウイルス感染症が夏以降、増加中との報道がなされました。現在は減少傾向ですが、それでも平年の3倍程度の発症数です。

 RSウイルスは主に冬期に流行し、乳幼児に細気管支炎などの重症下気道感染(空気の通り道のうち鼻から喉までが「上気道」、喉から肺が「下気道」)を引き起こすウイルスです。厄介なのは感染が終息しても気道の過敏性を残し、ぜんそくのような症状(朝夕のせき込みや、喉がごろごろ鳴るなど)を繰り返す恐れがあることです。

 1歳までに50%、2歳までにはほぼ100%の子が感染しますが、全ての子が重症になるわけではありません。半数以上の子は発熱、鼻汁といった、いわゆる「のど風邪」程度の症状で終息します。3割程度の子が下気道感染へ進行し、入院が必要なほど重症になるのは1〜3%程度です。

 残念ながら1度なったらもうならないという病気ではなく、何度でも感染します。ただし、2歳を超えてくると「鼻かぜ」程度で終わることがほとんどです。逆に乳児期(1歳未満)、特に生後6カ月以内の子は高い割合で重症化します。

 感染から発症の流れを見ると、まず、せき、くしゃみなどで飛び散ったウイルスを吸い込むことによって感染します。潜伏期は4〜5日です。その後、発熱、鼻汁などの上気道炎症状を起こし「風邪をひいた」状態が2〜3日続きます。

 多くの子はここで終息しますが、一部の子はその後、たんがらみのせき、ぜん鳴といった下気道症状が出現し、肩で息をするような呼吸困難を起こすことがあります。下気道へ感染が進行した場合、「今日より明日が悪くなる」状態が4〜5日間続きます。

 上気道症状の出現から7〜10日で回復期となります。ただし発症から2週間程度はウイルスが気道分泌物の中に存在します。

 特別な治療法はなく、対症療法が中心です。具体的には気道を閉鎖している鼻汁・たんを吸引して取り除くほか、去たん剤の投与、適切な体位、加湿、必要に応じて酸素投与(ここまでくれば入院が必要です)を行います。

 RSウイルスに対する有効なワクチンはまだ開発されていません。ただ、アルコール類や一般的な消毒薬で速やかに不活化できますので、適切な消毒薬の使用、手洗いにより感染を予防できます。

 冬から春先にかけてのこれからの季節はRSウイルスだけでなく、インフルエンザなどさまざまなウイルスが流行します。感染症の普遍的な予防策として、うがいや手洗いを習慣づけることが大事です。

 また、子どもの風邪症状は夕方から夜にかけて悪くなることが多く、RSウイルス感染症も夜間にせきや呼吸困難の増悪が見られます。特に乳児期のぜん鳴症状は急速に進行し、時に無呼吸に陥ることもあります。

 日中、せきなどの症状が見られるときは早めにかかりつけ医を受診し、夜間予測される症状に適切に対応できるようにしておきましょう。

(長崎市かき道3丁目、冨永小児科医院 院長  冨永 典男)

 

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