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2013年2月18日掲載

「小児の中耳炎」


 冷え込みが続き、風邪をひく人が多いこの時期。耳の痛みや急な夜泣き、発熱など小児に中耳炎が多く見られるのもこの時期です。

 耳は外耳、中耳、内耳より構成され、それぞれが機能して初めて、耳の機能(聴覚、平衡覚)を果たします。

 中耳炎とは、中耳に病変を持つ病態の総称です。急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出(しんしゅつ)性中耳炎、そして怖いものでは真珠腫性中耳炎などがあります。今回は小児に多い急性中耳炎について説明します。

 急性中耳炎は中耳腔(くう)に感染性の膿汁(のうじゅう、うみ)が貯留する状態で、症状は主に耳痛と発熱です。中耳腔に膿汁がたまるため当然ながら聞きづらくなりますが、痛みのためそれどころではありません。乳幼児から小児にかけて多く見られ、上気道炎に続いて発症する場合がほとんどです。

 治療は抗菌剤投与や耳、鼻の局所加療を施し、重症例では手術療法(鼓膜切開術)も行います。

 抗菌剤投与では適切な抗菌剤の選択が重要です。鼓膜切開術は膿汁がたまり腫れてしまった鼓膜を切開し、膿汁を出す方法です。鼓膜切開術を行うと、痛みは即座に消失し、早期に解熱します。

 鼓膜切開術を行う際、ご家族は「痛くないのか」「鼓膜を切って大丈夫か」「切った鼓膜はふさがるのか」などと聞かれますが、心配はありません。鼓膜は再生能力を持ち、膿汁を出し病巣が落ち着けば、切開した鼓膜は速やかに閉鎖します。鼓膜切開術が急性中耳炎治癒への一番の近道である場合も少なくありません。

 急性中耳炎は繰り返すことが多いのですが、最後まで治療を受けなかったり、自己判断で薬を中止したりしたことが原因であるケースも増えています。一度、中耳炎の診断を受けたら、最後まで必ず受診しましょう。

 急性中耳炎はいきなり起こることは、ほとんどありません。小児の場合、「黄色い鼻水が続く」「耳を触る」などの様子が発症の前兆である場合が多いので、「おかしいな」と思ったときはすぐに耳鼻咽喉科に相談することをお勧めします。

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 日本耳鼻咽喉科学会長崎県地方部会と県耳鼻咽喉科医会は今年も「耳の日」イベントを開催します。3月3日(日)午後1時から4時まで、長崎市築町のメルカつきまち5階ホールで第16回公開講座&相談会を予定しています。

 まず「人工内耳のはなし」と題して、人工内耳経験者、人工内耳メーカーの講演があります。

 次に「軽度・中等度難聴をめぐって」のテーマでパネルディスカッションがあり、医療、教育、難聴者、マスコミの関係者がそれぞれの立場から意見を交わします。

 当日は相談や補聴器、人工内耳の供覧コーナーもあり、どなたでも無料で参加できます。奮ってご参加ください。問い合わせは長崎大耳鼻咽喉科(電095−819−7349)まで。

(長崎市大浦町、どうつ耳鼻咽喉科クリニック 院長  道津 充)

 

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