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2013年3月4日掲載

「中高年の排尿障害」


 ご存じの通り、わが国では高齢化が進行しています。それに伴い排尿障害を訴える患者さんも増加しています。排尿は体の健康を保つ上で大変重要な機能です。きちんと管理しないといろいろな合併症を引き起こします。

 まず男性特有なものとして前立腺肥大症が挙げられます。診断は問診、触診、超音波検査などを行います。治療法は薬物療法、手術療法などがありますが、最近は多くの例で薬物だけでのコントロールが可能となっています。手術もその多くが内視鏡によるもので、開腹手術はほとんど行われません。

 ほかに前立腺がんも急増しています。これは血液中のPSAという物質を測定することにより、早期に発見することが可能です。

 次に女性特有なものとしては、骨盤底筋(骨盤の底でぼうこうや子宮、直腸などを支える筋肉群)が緩むことで生じる腹圧性尿失禁が挙げられます。診断は問診が主体となります。治療は肛門と膣(ちつ)を締める骨盤底筋体操、薬物療法、手術療法などがあります。最近は種々の工夫された手術が考案されており、多くの例で著しい改善を認めています。

 男女ともに見られる合併症としては過活動ぼうこうが挙げられます。ぼうこうが勝手に縮んだり、過敏な働きをするために尿が十分にたまっていないうちに、急に我慢のできない尿意が起きる状態です。強い尿意のために切迫性尿失禁という失禁を起こすこともあります。

 その治療では主に薬物療法を行います。ぼうこうの過敏な収縮を抑える抗コリン薬、ベーター刺激薬という薬物を用いて、多くの例で改善が認められています。

 ほかにも脳卒中の後遺症や神経の病気(パーキンソン病やその類似疾患など)でも、排尿障害が高率で見られます。それぞれの症状に合わせたきめ細かい対応により改善させることはできます。

 以上のように中高年になると、さまざまな要因で排尿のトラブルが起きます。年齢のせいだと考えて医療機関を受診しない方が多いのが現状ですが、泌尿器科ではいろんな対処法があります。困った場合はぜひ受診して、快適な人生を送られることをお勧めします。

(長崎市鶴見台1丁目、原口医院 院長  原口 千春)

▽骨盤底筋体操の方法

 (1)あお向けに寝て、脚を肩幅に開き、膝を立てる。体の力を抜いて肛門と膣をキュッと締める。そのままゆっくり五つ数えたら、ゆっくりと肛門と膣を緩める。

 (2)膝と肘を床に付いて四つんばいになり、手のひらに顎を載せた姿勢で、引き締めを行う。

 (3)机の前で脚を肩幅に開いて立ち、手を机に付いて全体重をかける。肩とおなかの力を抜き、引き締めを行う。

 (4)背筋を伸ばして椅子に座る。脚を肩幅に開き、おなかに力が入ったり動いたりしないよう注意しながら、引き締めを行う。

 いずれの姿勢でもいいが、10回を1セットとして行う。1日5〜10セットを目標に毎日続ける。早ければ2週間ほどで効果が出てくる。


 

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