>>健康コラムに戻る

2013年3月18日掲載

「月経前症候群」


 月経(生理)前のちょっとした体調変化は女性なら誰でも思い当たることと思います。しかし、ひどい、下腹痛、むくみ、乳房痛、イライラ、抑うつのため日常生活に支障を来す人は月経前症候群(Premenstrual Syndrome、以下PMS)や月経前不快気分障害(Premenstrual dysphoric disorder、以下PMDD)かもしれません。

 PMSは月経の3〜10日前から始まり、月経が始まると減弱あるいは消失する身体的、精神的な症状を示す症候群です。月経前緊張症とも呼ばれ、症状にもよりますが、月経のある女性の約30〜50%が経験しています。

 特に精神的症状が強く表れ、暴力的になったり、重度のうつ状態から自傷行為に走るような場合はPMDDの可能性があり、抗うつ薬などによる治療が必要になることがあります。PMSの20人に1人はPMDDといわれています。
 以下に主な症状や治療法などをまとめました。

 【症状】
 ▽身体的症状=頭痛、めまい、腹痛、乳房の痛み、肩こり、便秘、下痢、むくみ、体重増加、肌荒れ、おりものの増加など。
 ▽精神的症状=不眠、眠気、イライラ、無気力、憂うつ、引きこもり、情緒不安定、気分の高揚、神経質、集中力の低下、食欲や性欲の異常など。

 【原因】
 さまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられている。本人の性格や生活環境のストレスが発症因子、増悪因子となることもある。

 ▽女性ホルモンの失調による体液貯留説=排卵直後から月経までの時期(黄体期)に起こる卵胞ホルモンと黄体ホルモンの変動のため、水分やナトリウムが体の中に貯留して発症する。

 ▽神経伝達物質の代謝異常説=うつ病を誘導する脳内神経伝達物質セロトニンやβエンドルフィンの黄体ホルモンに対する感受性が高くなって起こる分泌異常説や、ビタミンB6欠乏が引き起こす神経内分泌系の調節異常説がある。

 【治療】
 医療機関で診断を受け、自分の病状を把握し、受け入れることが大切。理由が分かれば、精神的不安の軽減に役立つ。

 ▽対症療法
 経口避妊薬(低用量ピル、超低用量ピル)は排卵を抑制し、黄体ホルモンの分泌を抑える。副作用も少なく効果的。第一選択薬に位置付けている病院も多い。

 精神神経症状には抗不安薬、自律神経調節剤、抗うつ薬を処方。最近は抗うつ薬の中でも選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が有効との報告が多い。

 腹痛、頭痛に対しては非ステロイド系消炎鎮痛剤、浮腫には利尿剤、漢方療法では駆〓(7600)血剤(くおけつざい)、柴胡剤(さいこざい)、補血剤を使う。食事療法ではカルシウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルやビタミンB群を十分に取るよう心掛ける。

   月経前症候群は我慢すると対人関係に影響を及ぼすこともあります。一人で悩まず、気軽に産婦人科に相談してください。

(長崎市丸山町、小濱産婦人科 院長  小濱 正彦)


>>健康コラムに戻る