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2013年5月6日掲載

「B型肝炎の最新情報」


 B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。HBVは主として感染者の血液・体液を介して感染します。その感染様式には、ほぼ生涯にわたり感染が続く「持続感染」と、感染から一定期間たつとウイルスが排除されて治癒する「一過性感染」の二つがあります。

 持続感染の大部分は母子感染(産道感染)です。HBV持続感染者の母親から生まれる際、産道出血によりHBVが新生児の体内に侵入します。思春期を過ぎて免疫系が発達すると、体内のHBVを病原体として認識するようになり、排除しようと攻撃を始めます。この時、肝細胞ごと壊すために肝炎となります。これがB型慢性肝炎です。

 一般に15〜30歳ごろに肝炎が発症し、そのうち10〜15%が慢性肝炎が持続、一部が肝硬変、肝がんへと進展します。

 残りの85〜90%の方はHBVが著明に減少し、肝炎が沈静化します。以前は測定器の検出できないレベルまでHBVが減るため、治癒とみなされていた時代もあります。しかし現在ではHBVが免疫の力で押さえ込まれながらも存在し続けることが分かっています。

 この状態の方が他疾患の治療のために免疫抑制剤や抗がん剤を使用すると、免疫力が弱まってHBVが増殖、再び肝炎を起こすことになります。これがHBVの再活性化による肝炎です。

 一方、思春期以降に初めてHBVに感染した場合、そのほとんどは一過性感染で終わります。例外として、20〜30%が持続感染化するジェノタイプAと呼ばれる外来種のHBVがありますが、多くは自覚症状がないまま治癒し(不顕性感染)、一部の人が急性肝炎を発症します(顕性感染)。いずれも経過とともにウイルスが体内から完全に排除されて治癒に至り、終生免疫を獲得すると考えられていました。

 しかし、最近になって、この場合も肝臓の中にごく微量のHBVが存在し続けることが分かりました。前述の持続感染の場合と同様、免疫抑制剤や抗がん剤を使用すると、HBVが増殖し肝炎を起こすことがあるわけです。つまり、B型肝炎が治癒し、もうかからないと思われていた方にも再びB型肝炎が発症します。最初が不顕性感染であった場合は全く思いがけずB型肝炎が発症するわけです。

 この病態を「de novo肝炎」と呼びます。「de novo(デ・ノボ)」とは「新たに」や「再び」を意味するラテン語です。この肝炎はそれほど頻繁には起こりませんが、ひとたび発症すると通常の急性肝炎より高い確率で劇症肝炎になり、死亡率も高いといわれてますので、注意が必要です。

 一過性感染後の方は全体としては日本人の約20%とされます。この方々は血液検査でHBs抗体か、HBc抗体が陽性となりますので、容易に見分けることが可能です。免疫抑制剤や抗がん剤の治療を受ける方はぜひ主治医の先生と相談していただければと思います。

 (長崎市茂里町、日赤長崎原爆病院消化器内科 部長  鶴田 正太郎)


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