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2013年5月20日掲載

「子どもの近視について」


 5月は、新学期に学校で行われた視力検査の結果が家庭に配布される時期です。「去年まではずっとAだったのに」と心配顔で眼科を受診される親子が多くなります。

 視力低下の原因の多くは、「近視」によるものです。近視とは「近くは見えて、遠くはぼやける」状態です。どの距離も見えないわけではなく、ピントの合う距離が近くに移っただけで「近くは見えている」のです。そのため机の上での読み書きは裸眼でも困ることはありません。

 近視が生じる原因としては、角膜や水晶体の屈折力が強いため起こる「屈折性近視」と、眼球が前後に長いために起こる「軸性近視」があります。

 体の成長とともに眼球も成長し、目の奥行き(眼軸)が長くなると近視が進みやすくなります。成長のスピードが速い小中学生ぐらいが一番進み、18歳ごろまでに止まることがほとんどです。

 受験勉強やパソコン、ゲームなどで長時間にわたって近くのものを見続けていると、目の中の調節筋が近くにピントを合わせたままになり、近視の状態になります。

 学童期は、読書や机上の作業も多くなるため、近視になりやすい環境です。近視を予防するためには▽ゲームの時間を決める▽勉強は明るい部屋で、机との距離を保ち、適度に休憩をとりながら行う−といったことを心掛けましょう。

 子どもさんの視力は、体調や環境に左右されることも知っておくべきでしょう。

 このように近視は環境の変化や、体の成長に伴う眼球の長さの変化などが重なり合って生じ、進行します。時に指摘される遺伝や生活スタイルだけのせいではありません。

 近視がある程度進行してしまうと調節筋を緩める訓練や点眼では改善しないので、眼鏡の使用を検討することになります。中には、できるだけ子どもに眼鏡をかけさせたくないとおっしゃる親御さんもおられます。ですが、たくさんのことを見聞きして吸収する大事な成長期ですので、医師と相談の上、必要と考えられる状況なら対応してあげましょう。眼鏡をかけはじめたら、定期的に視力検査や眼鏡の調整をするよう気がけてあげてください。

 コンタクトレンズは眼鏡をかけていてはできない動きの激しいスポーツの際には、とても便利です。ただ、お子さん自身でスムーズに着けたり、外したりでき、用法を守って自己管理ができる年代から使うのが望ましいと考えます。

 マスコミで話題になっているレーシックやオルソケラトロジーという矯正方法について、日本眼科学会のガイドラインは学童期への適応を認めていません。「近視が治る」とアピールするさまざまな情報に惑わされず、眼科の定期検査でお子さんの見え方を見極めましょう。

(長崎市金屋町、本多眼科 副院長  大野 あかね)


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