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2013年6月17日掲載

「関節リウマチ」


 この梅雨の時期、手足の関節が痛むことはないでしょうか。6月は「リウマチ月間」。広くリウマチ性疾患の啓発が行われる季節でもあります。

 関節リウマチは名前が示す通り、関節を中心に炎症が起こり、しかも1カ所だけでなく複数の関節に病変が及びます。ひどい場合は痛みのために体を動かすことさえ困難になります。また、関節に炎症が起こると、細胞から関節を破壊するような物質が大量に産生され、最終的には関節の変形を生じ機能障害を起こします。

 このような経過をたどることから関節リウマチは長年、不治の病として恐れられてきました。しかし、最近は関節リウマチに対する薬物治療が著しく進歩し、早期に治療を開始すれば病気の進行を防ぐことが可能となってきました。そのため、できるだけ早期に発見することが重要です。

 これまで関節リウマチはかなり病変が進行しないと診断ができず、治療開始が遅れることが問題でした。

 そこで最近、米国と欧州のリウマチ学会が共同で新分類基準を提唱しました。まず一つの関節が腫れていて、関節リウマチが疑われれば血液検査を行います。そして関節症状や血液検査の結果を基に点数をつけ、合計が6点以上であれば関節リウマチと分類されます。

 しかし、関節が腫れる原因となる疾患は他にも多くありますので、それらを除外することが重要です。また、基準を満たさなくても関節リウマチの可能性の高い場合もあり、最終的に治療を開始するかどうかは十分な経験を積んだ専門医の判断が必要となります。

 関節リウマチは全身のどの関節からも発症する可能性はありますが、一般に手指の関節の痛み、腫れで気付くケースが多いようです。

 親指以外の手の指には、指先に近い方から遠位指節間(DIP)関節、近位指節間(PIP)関節、中手指節(MP)関節と三つの関節があります。関節リウマチはPIPやMP関節に発症することが多いので、DIP関節だけが腫れている場合はへバーデン結節、いわゆる変形性関節症の可能性が高いと思われます。

 PIP関節が腫れている場合は、ブシャール結節と呼ばれる変形性関節症であることも考えられます。しかし、PIP関節は関節リウマチの好発部位でもあり、初期の場合は区別が困難ですので精査が必要です。

 MP関節の腫れが手のひら側にあって、指の屈伸時にひっかかる症状がある場合は単なる「ばね指」の可能性が高いのですが、関節リウマチに伴うけんしょう炎がばね指症状を合併することもあります。

 このように手指の腫れや痛みはいろいろな原因で起こるため、診断が困難なことも多いのが実情ですので、専門医を受診することをお勧めします。そして、たとえ関節リウマチと診断されても決して悲観的になることはありません。早期に治療を受ければ十分克服できる病気であることを理解していただきたいと思います。

(長崎市銅座町、あじさいクリニック 院長  松本 智子)


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