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2013年8月19日掲載

「腎不全にならないために」


 腎臓の働きには、体内にできた老廃物を尿中に排出したり、尿量を調節し水分バランスをとったり、ナトリウムやカリウム、カルシウム、リンなどの電解質を調節したりすることがあります。さらに血液の酸性・アルカリ度(pH)の調節をしており、血液の生成に働くエリスロポエチンや血圧の調節に関わるレニンの産生も行っています。腎臓の働きがなくなったら、人間は体を正常な状態に保つことができなくなり、生きていけなくなります。

 腎疾患はかなり進まないと症状が出ないことが多いため、発見された時にはすでに腎機能が低下し回復できない状態になっていることがあります。従って、できるだけ早期に発見して治療を行う必要があります。

 早期発見のためには、検尿により尿異常を発見することが大切です。尿を見ることで、腎臓や尿路の状態がある程度予測できます。一般的にタンパク尿、血尿、白血球、細菌尿が問題となりますが、その原因にはさまざまな疾患があります。

 タンパク尿に関しては、まず起床直後の早朝尿での検査が必要です。外来に来られてからの検尿では、起立負荷が加わり陽性になることもあるからです。早朝尿で陽性だったら異常ですので、精査が必要です。

 タンパク尿は多くは腎臓から漏れ出てきます。検尿で陽性になった場合は、腎障害が進んでいると考えられ、治療を行わないと腎不全になる可能性があります。タンパク量が非常に多い場合はネフローゼ症候群といって全身にむくみが来たりします。

 糖尿病の場合は通常の検尿でタンパク尿が陰性でも、尿中にタンパクの一種アルブミンが微量でも認められたら早期の腎症が考えられます。タンパク尿の精密検査としては、腎生検による病理組織診断を行い治療方針を決定します。

 血尿に関しては腎臓だけでなく、尿路のどこからでも出てきます。腎臓からの場合は顕微鏡検査で尿中の赤血球が変形していることが多く、尿路からの血尿との鑑別ができます。一般的に血尿の強さと腎障害との関連はないとされますが、激しい腎炎では強い血尿が出る場合があります。

 一方、尿路からの血尿には腎結石や尿路結石、腎腫瘍、ぼうこう腫瘍などがあります。特に高齢の方で血尿が見られた場合は、尿路の腫瘍の可能性を考える必要があります。精密検査として腎エコーや腎CTなどの尿路の画像診断が必要となります。尿の細胞診で異常細胞が見つかる場合もあります。

 尿中白血球に関しては、ぼうこう炎や腎盂(じんう)腎炎などの尿路感染時に増加します。急性ぼうこう炎の場合は頻尿や残尿感などの症状がありますが、通常は発熱はありません。腎臓まで感染が及び、急性腎盂腎炎を起こすと高熱が出ます。尿路感染の場合は、尿の培養で細菌が証明されます。

 腎不全にならないために定期的に検尿を行い、腎臓、尿路の異常を早期に発見し、治療を受けるようにしましよう。

(長崎市興善町、長崎腎病院 院長  原田 孝司)


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