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2013年9月2日掲載

「進歩する骨粗しょう症治療薬」


 長寿化に伴い健康寿命の重要性が叫ばれる中、寝たきりにつながる骨粗しょう症による骨折の予防は重要な課題です。

 骨粗しょう症の患者さんは現在約1100万人いるといわれており、50代女性の実に4人に1人が該当します。また生活習慣病といわれる動脈硬化、高血圧、糖尿病、腎機能障害、慢性肺疾患を患っている方は、骨折する危険性が高いことも分かってきています。

 骨粗しょう症の予防についてカルシウムの摂取や適度な日光浴、運動の大切さは広く知られていますが、それだけでは予防治療には結びつかないのも事実です。近年はいろいろなタイプの治療薬が登場し、10年前とは治療体系が大きく異なってきました。

 骨の強度は鉄筋コンクリートの建物によく例えられます。コンクリートに該当するのが骨密度であり、鉄筋に相当するのが骨質です。骨密度はカルシウムやリン酸などのミネラルの総和であり、専用の装置で測定されます。

 一方、骨質はコラーゲンを主体とした微細構造からなりますが、残念ながら直接測定する方法は今のところありません。

 最近の治療薬のほとんどは骨密度を上げるものです。大規模臨床研究から最近の治療薬には確実に骨量増加、骨折予防効果があることが判明しています。

 骨塩量を増加させる薬としてはビスフォス製剤、活性型ビタミンD製剤、テリパラチドと呼ばれる副甲状腺ホルモン製剤が代表的です。数カ月前には骨を壊す細胞(破骨細胞)の形成を、抗体で抑える生物製剤も利用可能となりました。

 一方、骨質の改善効果があるものとしては、SERM(サーム)と呼ばれるエストロゲン類似作用製剤とビタミンK製剤があります。

 それぞれの薬の働き方は異なっており、治療を開始するにあたっては骨密度だけでなくエックス線検査、骨代謝マーカーと呼ばれる血液検査を併用して、おのおのの骨粗しょう症の原因や病態を把握する必要があります。家族に骨粗しょう症で骨折した人がいるかどうか、喫煙や飲酒の習慣などがあるかどうかも考慮したうえで、適切な治療薬が選択されます。

 同じ製剤であっても投与方法が内服だったり注射薬だったり、毎日服用から1カ月に1回で済むものまで多様にあります。薬である以上、副作用や他の薬との飲み合わせもありますので、主治医の先生とよく相談されるのが良いでしょう。

 仮に骨量増加効果が弱い場合、あるいは骨代謝マーカーの反応が不良な場合は、投薬内容を変更する必要もありますので、定期的な骨密度検査、血液検査が望まれます。

 日本整形外科学会は、骨と関節を中心とする運動器官が体の健康、およびQOL(生活の質)の維持にいかに大切であるかを認識してもらおうと10月8日を「骨と関節の日」と定めて啓発に取り組んでいます。まだ骨密度検査を受けていない方は、この機会にぜひ一度測定されてみてはいかがでしょうか。

(長崎市東町、塚崎整形クリニック 院長  塚ア 智雄)


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