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2013年10月7日掲載

「白内障の手術」

 白内障は眼球の中の透明な水晶体(カメラで言えばレンズ)が濁って、視力低下やかすみが生じる病気です。糖尿病など内科的な病気に伴うものや、ステロイド使用に伴うもの、若年性のものなど原因はさまざまですが、ほとんどが老人性のものです。

 濁りが強くなると薬剤では元の透明性を取り戻せないので、濁った水晶体を取り出して眼内レンズを入れる白内障手術が必要になります。日本では最近、年間100万件以上の白内障手術が行われています。ほとんどが老人性白内障なので長寿国では手術件数が多くなります。日本の高齢者の人口比率(25%)が今後高くなっていくと、件数はさらに増加していくと思われます。

 そこで、どの時点で手術を受けるかが重要になってきます。患者さんからもご質問を受けることが多いので、これについて述べます。

 白内障が進行すると視力低下以外にも、▽まぶしい▽ものが二重三重に見える▽眼鏡の度数がすぐ変わる▽霧の中のようにかすむ▽老眼鏡をかけても文字が見にくい▽離れた人の顔が分からない▽暗くなると運転しにくい−などさまざまな症状が出てきます。

 しかし、白内障の程度にはかなり幅があり、このような症状も人によってかなりの差があります。

 一般的に視力の程度としては0・4〜0・5くらいで手術を検討する時期ということになります。しかし、1・0くらい見えていても、かすんでいらいらする、まぶしくて運転しにくいといったことで手術をすることもあります。逆に0・1〜0・2程度でも不自由ないので手術しないということもあります。

 最近はいろいろな趣味、例えば絵を描く、パソコン、テニス、ゴルフ、山登り、運転、旅行などを楽しむ方が多いので、それらに不都合があるなら手術を考えて良いと思います。

 また、視力障害が進むと、うつ状態のリスクが3・5倍、転倒のリスクが1・5〜3倍、大腿骨頭骨折のリスクが2・8倍に上昇するとされます。アメリカでは白内障のある高齢者の交通事故のリスクは2・5倍という報告もあります。これらの好ましくないリスクも白内障手術によって回避、軽減できる可能性があります。

 現代の長寿社会は高齢を理由に手術をしないでおくより、手術によって視機能を改善し、快適な生活を送ることの方が望ましいと思います。もし生活や趣味に不都合が出てきて手術を受けようと思うときは、患者本人と眼科医、できれば家族も含めて3者で相談すべきです。手術のメリット、危険性、術後の注意点などをよく説明してもらってください。

 手術の安全性は向上し、患者さんの負担は軽減されています。しかし、知人が手術を受けたからといって、さほど不自由でもないのに手術する必要はありません。ただ、手術しない場合でも高齢になると水晶体が硬くなったり、膨らんだり、緑内障を起こしたりすることもあるので、定期的に目の状態を診てもらいましょう。

(長崎市千歳町、松園眼科 院長  松園 哲行)

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