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2014年2月3日掲載

「緩和ケアの利用を」


 緩和ケアとは何でしょうか。

 「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と家族の痛みその他の身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早期に同定し適切に評価し対応することを通して、苦痛を予防し緩和することにより、患者と家族の生活の質を改善する取り組みである」

 世界保健機関(WHO)は以上のように定義しています。

 がんが主な対象ですが、さまざまな非がん疾患(神経難病、心臓疾患、肺疾患、加齢疾患など)も対象となります。最近は非がん疾患の割合が増加しています。

 「第二の患者」と言われるように家族も精神的な面などさまざまな苦痛があります。

 患者さんだけでなく、家族に対してもケアを行います。

 がん患者さんの体の痛みに対しては、医療用麻薬を適切に使用して痛みを取ります。

 それ以外の体の症状はもちろん、精神的なこと、療養の場所、費用、仕事、学校、そして自己の価値観・死生観なども含めて全人的苦痛として対応します。

 また、緩和ケアは、病気が進行してからではなく、もっと早い段階から、診断がついたときや治療中からも行われ、病院だけでなく自宅・施設でも提供されます。

 このように緩和ケアは病気の種類、時期、療養の場所にかかわらず苦痛、つらさに焦点を当てて行われるケアです。

 ですから、医師だけでなく看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、介護関係者らによる多職種チームで行う必要があります。

 何を大事にするかという価値観は、患者さん、家族で違いますし、病気の時期によっても違いますので、患者さん、家族と話し合ってケアを決定することも大事です。

 そのように考えますと、患者さん、家族も緩和ケアのチームの一員である必要があります。

 現在、病院には緩和ケアチームという多職種で構成されるチームを持つところも多数あります。緩和ケア病棟やホスピス病棟もあります。地域には、開業医を中心として、介護関係、介護施設と連携したチームもあります。

 国も重点的に取り組むべき課題として地域での緩和ケアの推進を打ち出しています。

 しかし、まだまだ十分に普及していないのが現状です。

 現在、いつでもどこでも切れ目のない質の高い緩和ケアを提供できるように研修やシステムづくりを行っています。

 病気によるさまざまな苦痛で苦しまれている方で、緩和ケアを受けたい方は、病院の地域連携室や地域の相談窓口に、ぜひ相談されてください。

 共に寄り添いケアしてくれるチームが見つかると思います。

(西彼長与町、ホーム・ホスピス中尾クリニック 院長  中尾 勘一郎)

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