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2014年2月17日掲載

「生活に影響大きい難聴」


 皆さまの中には、耳が聞こえにくくて困った経験のある方もおられると思います。それまで当たり前のように耳にしていた音や言葉が聞こえなくなって、「聴覚」の重要性をあらためて確認されたのではないでしょうか。今回は難聴になる疾患を幾つか挙げ、難聴による問題点を探ってみましょう。

 軽度の難聴の原因には耳垢塞栓(じこうそくせん)や外耳炎、急性中耳炎、滲出(しんしゅつ)性中耳炎などがありますが、これらは的確な外来治療で比較的早期の改善が期待できます。しかし、長期の炎症で鼓膜の穴がふさがらなくなる慢性中耳炎や、耳の内部構造を壊しながら大きくなる真珠腫性中耳炎の多くは手術が必要になります。

 突発性難聴や低音障害型感音難聴は、聴覚の神経が急激に障害されるものです。難聴の程度はさまざまですが、早期に治療しないと治らないことがあり、時にはめまいの症状を伴うので、日常生活に大きな影響が出てしまいます。

 ウイルス感染、なかでもおたふくかぜの原因となるムンプスウイルスは片側の、サイトメガロウイルスは両側の高度難聴になることがまれに報告されています。

 画像診断技術や遺伝子研究が進み、耳の内部構造奇形や遺伝による難聴が判明してきました。それらの聴力は生来、重度なものから次第に悪化していくものまでさまざまで、治療が不可能なものも多数存在します。非常にまれですが、耳の中にもがんができることもあり、非常に高度な治療技術が要求されます。

 他にも難聴を来す病気は幾つもありますが、最も一般的なものは加齢による難聴でしょう。実は30代からじわじわと始まり、早い人では50歳すぎから日常生活に支障が出てきます。

 では、難聴を放置しておくと、どのような結果を招くのでしょうか。これは成人と小児とで少し意味合いが異なってきます。成人の場合は、日常会話が障害されるので、仕事がうまくいかなかったり、社会的孤立を招いたりするばかりか、抑うつ状態になる例も報告されています。

 小児にとっての聴覚とは、言葉を覚えて発音するために必要不可欠なものです。家族や友人の言葉をまねながら習得して言葉が増えていくのです。うまくいかないと発音がおかしかったり、学業が遅れたり、呼び掛けに反応しないために友人関係に支障を来したりすることが想像されます。

 健診などで難聴と診断されたら、治療の時期を逃さないようにしましょう。たとえ高度で治りにくい難聴と診断されても、成人はもちろん、乳幼児でも補聴器や人工内耳を用いて聴覚を確保した方が良いのではないかと思います。耳鼻咽喉科医師はその都度、適切なアドバイスができるよう努力してまいります。

 今月23日午後1時から佐世保市三浦町のアルカスSASEBOで「耳の日公開講座」を開催します。耳鼻咽喉科医師による耳寄りなお話や、補聴器の相談会を予定しています。参加は無料ですので、気軽にお立ち寄りください。

(佐世保市宮崎町、森本耳鼻咽喉科医院 院長  森本 健三)


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