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2014年5月19日掲載

「太陽光線と皮膚障害」


 日差しもめっきり強くなり、紫外線が気になる季節となりました。ヒトは古来より多くの恩恵を太陽から得ておりますが、一方で種々の皮膚障害も受けております。皮膚障害には急性と慢性があり、慢性のものは繰り返し太陽光線を浴びることによって引き起こされます。このような太陽光線の皮膚障害から身を守るには太陽光線のことを知らなければなりません。

 そもそも地上に届く太陽光線は波長の長さにより780ナノメートル以上の赤外線、780〜400ナノメートルの可視光線、400ナノメートル以下の紫外線により成り立っています。紫外線(ultraviolet、UV)はさらに、400〜320ナノメートルがUVA、320〜280ナノメートルがUVB、280〜190ナノメートルがUVCと分類されます。

 太陽光線に含まれる量としては赤外線と可視光線がほとんどを占めます。しかし、波長の短い紫外線は自身のエネルギーが大きいため、量は少なくても皮膚障害に重要な役割を果たしています。

 一番波長が短いUVCはオゾン層により吸収され地上には届きませんので、日常生活において問題となるのはUVAとUVBです。地上に降り注ぐ割合ではUVAが90%以上を占め、UVBは5%未満です。また、UVAはガラスを通過しますが、UVBはガラスを通過しないという性質の違いもあります。

 UVAは皮膚の深くまで到達しますので、しわが深くなる、シミが増えるなどの症状に中心的に関与していると考えられています。また、エネルギー量の大きいUVBは細胞の核中にあるDNAに傷を入れるため日光に当たる部分の皮膚がん発症に主体的に関与していると考えられています。

 環境破壊が叫ばれて久しいですが、オゾン層の破壊に伴いUVCに近いUVBによる皮膚がんの発症が問題になっています。

 紫外線は雨や曇りの日には当然少なくなりますがゼロではありませんし、もともと一定に降り注いでいるのではなく変動しています。年内変動ではUVAは2倍程度の変化しかありませんが、UVBは一番低い冬と比較すると夏は5〜6倍程度多くなります。また日内変動ではUVA、UVBともに午前10時から午後2時の間が最も強い時間帯となります。

 従いまして夏の紫外線は冬より注意を払うべきですし、雨や曇りの日も油断できません。1日の中でも特別の理由がなければ、戸外活動は午前10時から午後2時の間は避けるのが賢明です。

 外出のときは日傘、帽子、長袖が、戸外でのスポーツや作業時にはサンスクリーン剤(日焼け止め)の使用が紫外線防御に有効となります。特に戸外活動では汗をかきますので、汗を拭くことでサンスクリーン剤がムラになり、防御の効果が不確かなものになります。従いましてサンスクリーン剤は2時間程度で塗り替えることが肝要です。

 以上、簡単にお話しましたが、太陽光線の性質をよく知って上手に紫外線を防御しながら、健康な皮膚を長く保っていきたいものです。

(長崎市小峰町、清水皮膚クリニック 院長  清水 和宏)

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