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2014年6月16日掲載

「尿路結石」


 夏の時期に多く発生するといわれる疾患に尿路結石があります。近年、食事の欧米化に伴い増加しています。

 動物実験で、尿路結石と動脈硬化の発生メカニズムはよく似ていることが分ってきました。メタボリック症候群を抑える物質を投与すると尿路結石の形成が抑制されることや、細胞の酸化障害が尿路結石形成につながっていくことも分ってきました。実際に尿管結石を発症した人には脂肪肝がしばしば見られます。

 尿路結石は高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、動脈硬化症の予防のための食事療法や生活指導と共通点が多いことから、メタボリック症候群の一つといわれています。尿路結石になりやすい体質もありますが、生活習慣も関与しているのです。

 尿路結石再発予防で最も大切なことは、水分を多く摂取し尿量を多くすることです。糖分を控えたミネラルウオーターが良いようです。ビールは尿酸が多くなるため飲みすぎてはいけません。

 尿路結石の成分で最も頻度の高いシュウ酸カルシウム結石は、尿中に尿酸があるとできやすく、クエン酸やマグネシウムがあるとできにくくなります。シュウ酸を多く含む食物はホウレンソウ、タケノコ、カカオ、玉露などがあります。タケノコ、ホウレンソウは煮汁を捨てて摂取するとシュウ酸は少なくなります。

 牛乳や小魚などカルシウムを多く含む食品とシュウ酸を含む食物を一緒に食べると、腸内でシュウ酸カルシウムが形成され、腸から吸収されません。日本人はカルシウムの摂取量が少ないといわれており、カルシウム結石を予防するためにも一定のカルシウム摂取を行うことが勧められます。

 塩分や動物性タンパク質、プリン体を多く含むレバーなどは控えるようにしましょう。カロリーや塩分、砂糖、ビールを取りすぎないようにし、かんきつ類(クエン酸を含む)、マグネシウム、カルシウムをよく摂取し、抗酸化剤を含む緑茶、ポリフェノール(赤ワイン)、ビタミンE、ハーブ茶を飲食した方が良いでしょう。

 結石は夜作られるといわれてきました。また骨折患者や宇宙飛行士に、腎結石ができやすいことも知られています。体を動かさないことと尿濃縮のためと考えられます。

 尿路結石の予防には、夕食から就寝までの時間を長くするように食事の取り方に注意し、適度な運動を行うという生活習慣を、三日坊主でなく、しっかり身に付けることが大切です。

 濃い味のおいしい食べ物があふれている時代に、メタボにならないようにすることは難しいことです。往々にして生活習慣病というと、「分かっちゃいるけど、やめられない」と聞き流されがちです。しかし、努力もしないで悪化するようならば、医療費の自己負担を増やされるペナルティーを受ける時代がやってくるかもしれません。

 尿管結石の七転八倒する痛みを思い、生活習慣を改善、維持してほしいと思います。

(長崎市深堀町1丁目、長崎記念病院泌尿器科 部長  松崎 幸康)

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