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2014年10月20日掲載

「ひふの日」

 皮膚の日(11月12日)にちなんだ第25回ひふの日講演会(長崎臨床皮膚科医会など主催)が11月15日午後3〜5時、長崎市栄町の市医師会館で開かれる。テーマは「床ずれと糖尿病による皮膚潰瘍」。講師を務める長崎大大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学教授の宇谷厚志氏に概説を寄稿してもらった。

 子どものころ、運動場や裏山、近所の川で遊んでは、膝に擦り傷などをつくり、赤チンまたはオキシドールとばんそうこうで治療したものです。2、3日で乾いたかさぶたができ、じわじわっとゆっくりと治っていきました。

 しかし、10年くらい前から、傷への過度の消毒を避け、フィルム状やスポンジ状などの被覆材(ドレッシング材)を利用して乾燥させずに適度な湿潤環境に保つことが治癒を促進させると知られだし、ぼちぼち一般的になってきています。

 本講演では切り傷、擦り傷より深くてなかなか治らない皮膚潰瘍がテーマ。糖尿病性足潰瘍と褥瘡(じょくそう、床ずれ)の二つを中心に、家庭でも役立つ知識を紹介しようと思います。

 【糖尿病性足潰瘍】
 糖尿病は徐々にその人数が増えてきており、可能性のある人まで含めると2千万人弱になるとの報告もあります。そのうち足に潰瘍・壊疽(えそ)を有する患者は2011年時点で8万人以上と報告されています。

 糖尿病性足潰瘍の患者にとって最もおそろしいシナリオは足切断です。皆さんは「なぜ糖尿病は足潰瘍ができるのか」「切断に至らないために患者は何を知るべきか」「どういう皮膚潰瘍が危ないのか」といった質問が浮かばれると思います。

 足に潰瘍があるとき、最も大切なことは皮膚のすぐ下が骨であるので、関節、骨自体に細菌感染が及び、重症になりやすいということを知ることです。糖尿の人は足の潰瘍がひどくなるまで痛みを感じない場合が多いため、日々の足の観察が重要となります。

 【褥瘡】
 いわゆる床ずれは、ご存じのように血流不足による皮膚潰瘍です。いろいろな基礎疾患で床に伏した状態でできるためこの名前があります。

 高齢の方に多く、肺炎などで熱を出して動けなくなると、体重がかかる部位の皮膚が壊死(えし)に陥ります。基礎疾患があり体が弱っている人にできますので、治癒までに数カ月以上かかることはよくあります。

 この疾患の最悪のシナリオは感染症からの重篤な合併症です。治療は、床ずれの程度(時期)により家庭、訪問介護、デイケアで対処できるものから、皮膚科医、栄養士、リハビリスタッフなども入ってチームを組んで行う総合的治療が必要なケースまであります。

 床ずれは「全身の状態が悪い」「高齢」と治癒しにくい条件がそろっている場合に多く生じます。床ずれは容易に感染を伴い、悪化すると全身性の感染症となることを知っておくことが重要です。そのため体位変換など処置の際の傷の観察は非常に大切です。

(長崎市坂本一丁目、長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科  宇谷 厚志)

 皮膚潰瘍への取り組みは皮膚科医が最も得意とするところです。治療の実践の基になっている理論的根拠も交えて話します。講演は無料です。ぜひ多くの方に参加いただければと思います。

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