>>健康コラムに戻る

2014年11月3日掲載

「慢性腎臓病(CKD)」

 みなさん、CKDという言葉を耳にしたことはありませんか。「AKBなら知っている」と言われる方もいると思いますが、CKDとは「Chronic Kidney Disease」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと慢性腎臓病となります。最近、「ドカベン」の愛称で親しまれた元プロ野球選手の香川伸行さんが急逝されましたが、彼はこのCKDであったものと思われます。

 CKDは2002年にアメリカ腎臓財団が提唱した新しい疾患概念です。簡単に言えば「持続的におしっこにタンパクが出る」、あるいは「持続的に腎臓の働きが低下した状態」を指します。

 この病名が創設された最大の理由は、慢性的な腎臓の働きの低下が、人工透析の導入のみならず、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病の死亡リスクを増加させる重大な危険因子であることを、国民に認知してもらうことにありました。

 日本でも2006年に慢性腎臓病対策協議会が発足し、厚生労働省もCKDの予防、治療研究の推進を積極的に行っています。

 現代は飽食の時代です。糖尿病、肥満、高血圧、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)、メタボリック症候群などの生活習慣病が増加している状況に、高齢化という社会背景もあってCKDは増加しています。日本では成人の8人に1人はこの疾患に当てはまるといわれています。女性より男性に多く、たばこを吸う人、太っている人に多いようですが、誰もがかかる可能性がある病気です。

 腎臓の働きは、血清クレアチニン値を基にして推定糸球体ろ過量(e−GFR)で判定します。クレアチニンは本来おしっこに排せつされる老廃物の一つで、腎臓の働きが悪くなると血液中にたまり、高値となります。

 e−GFRは単位時間当たりにクレアチニンが完全にろ過される血漿(けっしょう)量のことです。クレアチニンは年齢、性別で産生される量に差があるため、e−GFRは換算式を用いて算出します。e−GFRが60を下回るとCKDの定義に当てはまります。

 この数値が低くなるほど心血管病の発症や死亡の危険が高くなります。低下しないように高血圧や糖尿病、脂質異常症などがあれば、その治療をしっかり行うことが大切です。

 それらの病気がなくても▽肥満に注意する▽たばこを吸わない▽過労を避ける▽睡眠を十分にとる▽体力に合わせた無理のない運動を定期的に行う−など生活習慣に注意する必要があります。

 また、脱水症や感染症は腎臓の働きを一気に悪化させることがあります。適切な水分の補充や風邪の予防(手洗い、うがい)を行うことが大切です。薬では鎮痛剤など腎臓に負担をかける薬を飲みすぎないようにしましょう。

 CKDは自覚症状がないうちに進行する怖い疾患です。簡単な血液検査、尿検査で分かりますので、検診などの機会を見つけて検査を受けてください。

(長崎市虹が丘町、虹が丘病院 院長  冨永 雅博)

>>健康コラムに戻る