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2014年11月17日掲載

「変化する糖尿病の治療」

(糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、その他特定の機序、疾患によるものに分類されますが、ここでは生活習慣との関係の深い2型糖尿病を取り上げます)

 (1)長崎の糖尿病事情
 2012年度の国民栄養調査の結果では、糖尿病を強く疑われる人は約950万人、糖尿病の可能性が否定できない人は約1100万人と推計されています。合わせると2050万人で、1997年以降、初めて減少に転じました。しかし、依然として2千万人以上に上り、臨床の現場は何ら変わりがありません。

 一方、糖尿病を強く疑われる人のうち、現在治療を受けている人の割合は男性65・9%、女性64・3%で増加しています。このことは糖尿病の脅威に関心を持ってくださる方が増えてきていることの表れと、糖尿病に携わる者にとっては勇気づけられる思いです。

 今回の調査の結果、長崎県の男性のBMI(体格)は全国ワースト1位、女性はワースト2位と不名誉な結果でした。野菜消費量が少ないことや、歩数が他県に比べて少ないことが反映されたと考えられます。行政を通じ県民を挙げての対策が必要であると考えます。

 (2)変わったところ
 この数年で糖尿病の治療は大きく変わりました。従来から使われていた経口血糖降下薬「メトホルミン」の有用性が見直され、2009年12月には新タイプの「DPPW阻害薬」が発売されました。治療薬の課題である低血糖(血糖値が低くなりすぎること)や体重増加が少なくなったのです。

 中でも低血糖は血糖コントロールを改善する上で大きな問題でしたが、これらの薬剤の登場で、より安全にコントロールすることが可能となりました。その他の薬剤も見直され、現在はそれら低血糖を起こしにくい薬剤を中心に治療されるようになりました。

 糖尿病の医療体制も変わってきています。本県では県医師会の先生の尽力により、「長崎県内で統一した糖尿病治療を!」を目標に、「かかりつけ医」と「専門医」が一緒に治療に取り組む連携体制の構築も進んでいます。詳しくは県医師会、県医療政策課のホームページをご覧ください。

 (3)変わらないところ
 糖尿病治療で最も大事なものは食事療法と運動療法です。この二つがなければ治療は成り立ちません。現在の食事を少し見直すだけで、血糖コントロールは改善することも多いのです。

 糖尿病の治療は、血糖の正常化だけではありません。血糖コントロールを通じて、脂質やタンパク質を含め代謝全般を是正し、合併症をなくすことが重要です。

 運動も日常生活で可能なところから始めてください。ウオーキングは最も効率的な運動の一つです。必ずしも連続してできなくても結構です。なかなか時間がとれない方には万歩計を持ち、自分の一日の歩数を確認することから始めてください。ラジオ体操もお勧めです。堅苦しいことは抜きにして、できるところから始めてみませんか。

(諫早市高城町、たきの内科クリニック 院長  瀧野 博文)

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