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2014年12月1日掲載

「脂肪肝」

 人間ドックでメタボリック症候群だった方に、「脂肪肝もありますね」と伝えることがよくあります。しかし、それが健康上どんな意味を持つか、十分に知られていないと感じています。

 定義は「全肝細胞の30%以上に著明な脂肪滴(中性脂肪)の蓄積がある」状態です。国際基準ではより厳しく「5〜10%以上の脂肪滴の蓄積」とされています。

 脂肪肝は大きくアルコール性と非アルコール性に分けられます。中でも非アルコール性脂肪肝は近年、英語名を略して「ナッフルド」と呼ばれ、注目されています。

 ナッフルドはメタボリック症候群由来の脂肪肝で、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧などの生活習慣病を高率で合併しているのが特徴。その患者数は1千万人に上るとみられています。

 さらにナッフルド患者の10〜20%、推定200万人に、非アルコール性脂肪肝炎である「ナッシュ」が含まれています。残りは「単純性脂肪肝」といわれますが、この中からも10%程度がナッシュに変化するとされます。

 炎症による肝機能障害を伴うナッシュの20〜30%は進行性で、肝硬変、肝がんの原因となることが分かってきました。中高年の女性に多かったのですが、食生活の乱れからか、最近は30歳以下でも増加中です。

 ナッシュの成因は2ヒット理論で説明されています。まず肥満や糖尿病などでの初回のヒットによって脂肪肝が発症します。さらに酸化ストレス(活性酸素による生体作用の不均衡)、脂質過酸化、エンドトキシン(細菌の外膜にある内毒素)などで生じるサイトカイン(細胞から放出され、種々の細胞間情報伝達分子となる微量生理活性タンパク質)による2回目のヒットを受けて肝細胞障害が引き起こされ、ナッシュ、肝硬変へと進展していきます。

 その基本にはインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)があり、2回目にどの因子がヒットするかについては遺伝的要因が推定されています。

 ナッシュの診療は、まず広く脂肪肝を診断する必要があります。肝組織に脂肪が蓄積すると、エコー(超音波検査)、コンピューター断層撮影(CT)などの画像検査で特徴的な所見が確認できます。簡便なエコーが1次検査として有用です。

 その所見は(1)bright liver=肝実質のギラつき(2)肝脾(かんぴ)コントラスト=肝臓と脾臓(ひぞう)のエコーレベルを比較する。CTで肝/脾のdensity比=L/S比が0・9以下(3)肝内脈管の不明瞭化(4)肝深部のエコー減衰−です。(1)と(2)に、(3)が加われば明らかな脂肪肝であり、(4)があれば高度といえるようです。

 生活習慣病がある人は人間ドックなどでエコー検査を受け、肝臓、胆のう、膵臓(すいぞう)などをチェックすることをお勧めします。脂肪肝と指摘された場合はナッシュを頭に浮かべながら、関連する生活習慣病を解消するように心掛けましょう。「たかが脂肪肝、されど脂肪肝」です。

(長崎市大浦町、長崎あじさい病院 院長  佐々木 誠)

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