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2015年1月19日掲載

「地域包括ケアシステム」


 「地域包括ケアシステム」という言葉をご存じでしょうか。

 2025年、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり少子高齢化がさらに進むと、現在の医療・介護制度では高齢者を含めた住民の健康を支えることが難しくなります。認知症高齢者の増加も大きな問題です。高齢で独居、高齢者だけの世帯も増加します。年間死亡者数は30年までに約40万人も増加が見込まれ、みとり先の確保も困難になると考えられます。

 「地域包括ケアシステム」とは、重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、日常生活圏域(中学校区程度)の中で▽医療▽介護▽予防▽住まい▽生活支援−が一体的に提供される新たな地域づくりのことです。

 このシステムは高齢者だけでなく障害者や子どもを含む地域全ての住民のための仕組みで、全ての住民の関わりにより実現されるべきものです。

 大事な要素としては、必要な住まいが整備され、希望にかなった住まい方が確保されていることがあります。そして、従来通りの生活が維持・継続するための生活支援・福祉サービスが整えられた中で、専門的な介護、医療、予防サービスが提供されることが必要です。

 新たな仕組みをつくり、うまく働かせるためには、介護保険、医療保険などの「共助」だけに頼らず、地域住民やボランティアらが関わる「互助」を利用しながら、自分のできることはできる限り自分で行う「自助」という考え方を持つことが最も必要です。それでも足りないところを税金などの負担で行う「公助」が補うという形になります。

 高齢者はサービスの利用者である前に「自助」の主体としてできる限り自分で自らの生活を支え、可能であれば地域支援を行うことが求められます。提供されるサービスも支えるためだけでなく、本人が自立できるようなサービス提供が検討されています。

 「地域包括ケアシステム」は地域ごとの特性に応じて構築することが求められています。

 長崎市では、全国に先駆けて疾病などで病院に入院された方が病診連携を通じて在宅療養へスムーズに移行できるようなシステムづくりが行われていて、在宅医療とその継続を支える多職種(医師、薬剤師、看護師、歯科医師など)のさまざまなネットワークが既に構築されています。

 その長崎市では市内19カ所の地域包括支援センターを核として「地域包括ケアシステム」構築を進めようとしています。在宅生活を支えるために医療、介護、福祉の緊密なネットワーク構築が必要です。支援センターが介護、福祉の相談窓口にとどまらず、医療との連携を深め、地域の支援体制の構築に大きな役割を担うことが期待されています。

 「地域包括ケアシステム」構築のためには、市民、行政が一丸となって自分のこととして何ができるかを考え、地域づくりに積極的に参加することが求められています。

(長崎市医師会 副会長  藤井 卓)

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