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2015年2月5日掲載

「子どもに満足感を与える育児法」

 子育ての悩みの一つであるきょうだいげんか。親は子どもに「平等」に接していても、子どもの感じ方は異なり、けんかの原因になるケースも。親はどう対処したらいいのか。長崎市川平町の森こどもクリニック院長、森了吾さんに寄稿してもらった。

 きょうだい3人で1個のケーキをいつも3等分していると、いつまでも満足が得られず、いつまでもケーキを食べたいと思い続け、「ケーキを買って! 買って!」と要求し続ける。時に独り占めして1個丸々食べたら、十分満足し、しばらくケーキを食べなくても我慢できたりする。

 同様のことが母子関係にも当てはまる。子どもたちはみんな母親を独り占めしたい。独り占めすることにより母親の絶対的愛情を受け、心が十分に満たされる。しかし、兄弟姉妹が多い場合、「みんな平等に」の考えの下、何分の1の愛情しか受けられず、心はいつも満足しない。不満がたまりきょうだいげんか、反抗、いじめなどでなかなか家庭が落ち着かない。

 時には目いっぱい心を満たしてやる必要がある。それには、それぞれの子に「お母さんはあなたが一番好き」と思わせる機会をつくってやることである。2人きりの時、「おにいちゃん、おねえちゃんには内緒よ」と言ってケーキを食べに行ったりするのである。

 あくまで「こっそりえこひいき」で母親とその子だけの大事な秘密をつくることが重要である。

 しかし、子どもにとってはこんなうれしいことはなく、いくら内緒といってもきょうだいに言いたくてたまらない。時には家に帰ってつい口にする。

 ここで大事なことは、他の子にばれたら言い訳せずにひたすら謝ることである。決して「今度は、あなたも連れて行くから」と言ってはいけない。それを言ったら「お母さんはあなたが一番好き」にならない。謝っている時、満足げな連れて行った子の表情が全てを物語る。そして、機会を見つけ、他の子どもにも「こっそりえこひいき」をするのである。

 それぞれの子どもが「お母さんは、自分のことが一番好き」と思うようになったとき、初めてきょうだい間での思いやりが出てくる。自分の心がいっぱい満たされて初めて、他の子に対する優しさが出てくるのである。その日の生活費も十分でない人に、困った人のための寄付をお願いしても無理なことなのである。普通の人間は、自分に余裕があるからこそ他人を助けたいと 思うものである。

 子どもが多いときは、みんなに「こっそりえこひいき」も大変なこと。そういうときは年長の子の心をまず満足させてやると、優しく下の子の面倒を見てくれるようになり、子だくさんでもみんな十分に心は満たされるのである。

 余談として「こっそりえこひいき」は応用編として、学校・幼稚園・保育園の先生と子どもの関係、職場の人間関係(特に部下に対して)を良好にするためにも役に立つ。

 上手にえこひいきして、それぞれの子どもさんに、自分が一番かわいがられているという優越感を持たせ、よりよい親子関係を築いてもらえればと思う。

(長崎市川平町、森こどもクリニック 院長  森 了吾)

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