>>健康コラムに戻る

2015年3月2日掲載

「手のしびれ」

 手のしびれでお困りの方は整形外科、脳神経外科、神経内科を受診されることをお勧めします。

 しびれの定義は意外に難しいのですが、ここでは主に知覚の異常や知覚の低下とご理解ください。手や腕の皮膚に分布する感覚器への刺激は末梢(まっしょう)の神経を伝わって頸髄(けいずい)や上位の胸髄に到り、さらに視床、大脳皮質へと信号が送られ、触った、温かい、痛いなどの知覚を感じることができます。その伝導経路のどこかが障害されるとしびれを感じるわけです。

 脳から起こる原因として脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などが挙げられます。しびれの症状は、大脳より深い所にある視床より下で障害されない限りひどくありません。片側の腕と脚の筋肉がまひ(片まひ)したり、意識障害、認知障害、言語障害などを伴ったりすることがあります。

 頸髄を原因とする疾患として頸椎(けいつい)症、椎間板ヘルニア、頸髄腫瘍、脊髄炎などが挙げられます。頸髄の外側から伸びている神経根がヘルニアや軟骨で圧迫されると、その神経が分布する肩から腕、手にかけて痛みやしびれ、筋力低下が起こります。ヘルニアや腫瘍が大きいと頸髄への圧迫が強くなり、片方の手のしびれにとどまらず、両手のしびれ、さらには両脚のしびれや歩行困難まで起こります。

 次に、代表的な末梢の神経の障害を述べます。頸髄と上位の胸髄から出た末梢神経の束は頸部の外側をくだって鎖骨の下を通り、脇の下を経て上腕に到る所、尺骨神経、正中神経、橈骨(とうこつ)神経の3本の神経にまとめられます。

 神経の束が鎖骨の下を通る所で腕を上げたときなどに、第一肋骨(ろっこつ)や頸部の筋肉などで圧迫されてしびれが起こる胸郭出口症候群という疾患があります。なで肩の人は鎖骨と肋骨の間が狭く、しびれやすいようです。

 尺骨神経は肘の内側後ろの肘部管というところを通りますが、肘の変形のため肘が伸ばせなくなると、長い年月のうちにこの神経が肘部管で圧迫されて、小指と薬指がしびれることがあります。

 正中神経は肘の前を進み、手根管という手のひらの深い靱帯(じんたい)の下を通って指に達します。手のひらの負担の大きい作業、手首の骨折、腎透析の患者さんでは手根管が狭くなり、この神経が圧迫されて親指から主に中指がしびれることがあります。

 橈骨神経は肘の外側を回って進み、手の甲の親指側の感覚に関係します。上腕骨の骨折や腕を長い時間圧迫した姿勢でいると、この神経がまひすることがあります。

 しびれだけでなく、これらの神経障害は特有の筋力低下や手の形の異常も見られます。全身疾患として糖尿病の方や手の腫れが強いとき、血行障害がある場合はしびれが起きやすいです。

 治療は理学療法や薬物療法、神経ブロック注射、神経圧迫を解除する手術などが行われます。整形外科は骨や関節、筋肉だけでなく脊椎や末梢神経も専門分野ですので、ご相談ください。

(西彼時津町野田郷、さがら整形外科 院長  相良 耕三)

>>健康コラムに戻る