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2015年5月4日掲載

「女性の排尿障害」

 女性には一生、排尿の悩みがつきものであるといわれています。女性は尿道が短く、さらに出産という大仕事を行うため、男性とは違ってさまざまな女性特有の排尿障害があるのです。

 小児期から見られる「ぼうこう炎」。出産後はせきや運動で尿が漏れる「腹圧性尿失禁」。中年期からは頻尿や尿意切迫感に悩む「過活動ぼうこう」。更年期以降にはぼうこうや子宮が下がって排尿に影響する「骨盤臓器脱」。老年期になると足腰が弱り認知症も加わって起こる「機能性尿失禁」。このように女性のライフサイクルごとに排尿トラブルは変化します。

 「ぼうこう炎」は女性なら生涯に一度はかかるといわれるほど多い病気です。成人男性の尿道の長さは16〜20センチですが、女性は3〜4センチと短くて肛門や膣(ちつ)と近く、細菌がぼうこうに入りやすい構造になっているからです。治療は水分を十分に摂取して尿量を増やし抗生剤を内服します。

 「腹圧性尿失禁」は、軽症も含めると女性の4割を超える2千万人以上が悩まされているといわれています。特に出産を経験した女性に多い病気です。加齢や出産により、尿道や膣を周りから支えている尿道括約筋などの骨盤底の筋肉群が緩み、せきやくしゃみをしたり重い荷物を持ったりしておなかに力が入ったときに尿が漏れます。階段の上り下りやスポーツ時に漏れることもあります。

 ぼうこうを緩めて尿道を締める薬物療法や、骨盤底筋群訓練の体操が有効です。重症の場合には、メッシュテープを使った手術を行います。

 「過活動ぼうこう」はさまざまな原因によりぼうこうが敏感になった状態で、急に何回も尿をしたくなります。間に合わず尿が漏れることもあります(切迫性尿失禁)。冷たい水が刺激になって尿が漏れる人もいます。

 40歳以上の女性の8人に1人、800万人が過活動ぼうこうであるといわれています。治療はぼうこうを緩めてリラックスさせたり、異常収縮を抑えたりする薬物療法や、ぼうこう訓練などのトレーニングを行います。

 腹圧性尿失禁と同様に、骨盤底の構造的な弱点のために起こる病気に「骨盤臓器脱」があります。膣の入り口から、子宮やぼうこうなどが下がって外部に出た状態です。出た臓器の種類によって「子宮脱」「ぼうこう瘤(りゅう)」などと呼ばれます。膣の辺りにピンポン玉のようなものに触れて気付く人が多いようです。「ぼうこう瘤」が約60%と最も多く、尿が出にくくなり、排尿後もすっきりしないといった症状も出てきます。

 臓器脱に薬物療法は無効で、手術が必要です。以前は子宮摘出・膣壁補強手術が主流でしたが、最近は子宮を摘出せずに、緩んだ靱帯(じんたい)や膣壁をメッシュで補強するメッシュ手術が注目されています。

 排尿でお悩みの女性は一人で悩まず、気軽に泌尿器科専門医に相談されることをお勧めします。

(西彼時津町、腎・泌尿器科松尾りょういちクリニック 院長  松尾 良一)

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