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2015年7月20日掲載

「逆流性食道炎」

 皆さんは逆流性食道炎という病気をご存知でしょうか。胃酸が食道に逆流して起こる病気です。

 胃酸は食べ物を消化・殺菌するといった働きをする強い酸です。胃の粘膜は特殊な粘液で保護されているため一般的に胃酸で傷つくことはありません。しかし、食道は胃酸から粘膜を保護する仕組みがないため、胃酸が逆流すると炎症を起こしてしまいます。

 通常、食道と胃の境目には下部食道括約筋という筋肉が存在し、それが締まることによって食べ物や胃酸の逆流が起きない仕組みになっています。加齢や食生活などさまざまな要因で下部食道括約筋の締まりが悪くなると逆流が生じるのです。

 逆流性食道炎は次のような人に多いと言われています。

 ・油っぽいものをよく食べる方

 ・ストレスの多い方

 ・太っている方

 ・腰の曲がった方

 症状はさまざまで、胸焼けや喉の違和感、げっぷ、おなかの張り、苦い水が上がってくる、みぞおちの痛み、つかえ感、せきなどがあります。このような症状で耳鼻科や循環器科、呼吸器科などを受診される方は多いと思いますが、検査で異常がないときは逆流性食道炎の可能性があります。

 逆流性食道炎では、症状から判断し内服治療の効果を見る方法もありますが、治療前に内視鏡検査を受けることをお勧めします。日本人はピロリ菌の感染率が高く、ピロリ菌が原因となる胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんといった病気が多く見られるためです。内視鏡検査を行うことで(1)その症状が本当に逆流性食道炎によるものであること(2)同じような症状の原因となる胃潰瘍や胃がん、食道がんなどがないこと−を確認できます。

 主な治療法は薬物療法と生活習慣の改善です。

 薬物療法では、胃酸を抑えるお薬(酸分泌抑制剤)が大きな柱となります。さらにその中で最も有効性の高いプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第1選択薬になりますが、即効性のあるヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)を使用されることもあります。

 最近ではPPIの中でも作用発現が速やかで、24時間安定した酸分泌抑制効果を持つ新たなPPI(ボノプラザンフマル酸塩)も使用可能となりました。PPIに他の薬を併用することで治療効果が上がることもあります。既にPPIによる治療が開始された方でも、症状がまだある方は医師に相談してみましょう。

 生活習慣の改善では、油っぽいものや甘いもの、刺激物、アルコールは胃酸の分泌を増やすため、これらのものを控えるようにしましょう。喫煙も下部食道括約筋を緩める要因となりますので、禁煙も重要です。

 また▽食べてすぐ横になる▽食べ過ぎや早食い▽前かがみの姿勢をとる▽ベルトや下着でおなかを締め付ける−などの行為は、胃の中のものが食道へ逆流しやすくなるので注意が必要です。肥満も逆流性食道炎の原因となりますので、適正体重を維持するよう心がけましょう。

(長崎市大手1丁目、みしま内科・消化器内科クリニック 院長  三嶋 亮介)

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