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2015年9月7日掲載

「運動器の障害」

 「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか。健康の問題がなく健やかに日常生活を送れる期間のことです。残念ながら本県は男性では69・14歳で45位、女性でも73・05歳で39位(2010年)と全国でも低い状況にあります。

 「行きたい所に行き、やりたいことをやる」「いつまでも健康で充実した生活を送りたい」。これは誰もが望むことです。しかし、運動する習慣がない生活を続けると、知らず知らずのうちに足腰が弱ります。立ち座りや歩行がつらくなると外出がおっくうになり、人と会わず家にいる時間が長くなります。これは運動器の障害(ロコモティブ症候群、以下ロコモ)といっていい状態です。

 運動器の障害のチェックは簡単で、次に挙げる項目のうち一つでも当てはまるものがあればロコモといえます。(1)片足立ちで靴下がはけない(2)家の中でつまずきやすい(3)階段を上るのに手すりが必要(4)横断歩道を「青」の間に渡りきれない(5)15分続けて歩けない(6)2キロの荷物を運ぶのが困難(7)布団の上げ下ろしが困難。

 一つでも疑わしいものがあれば「ロコトレ」をお勧めします。ロコモを予防するために整形外科学会が勧めている体操のことです。代表的なものを二つ紹介します。

 一つ目は片足立ちです。転倒しないように机などつかまるものがある場所で目を開け、片足立ちを左右それぞれ1分間ずつ行うだけ。これを1日3回行えば、50分間の歩行の効果に相当するといわれています。こつは姿勢を真っすぐにして行うことです。

 二つ目はスクワット(しゃがみこみ)です。肩幅より少し広めに足先を広げて立ち、膝がつま先より前に出ないように(お尻を後ろに引くように)ゆっくりしゃがみこみます。膝は90度以上曲げないようにしてください。ゆっくり5、6回続け、これを1日3セット行ってください。こつは息を止めずにゆっくり深呼吸しながら行うことです。どちらも転ばないように気をつけてください。

 もっと本格的に取り組みたい方には整形外科でのリハビリ(運動療法)をお勧めします。

 まず整形外科で「運動療法を行いたい」と伝えてください。医師の方に生活状況を教えていただき、腰や膝の診察をして変形や病気の程度を確認します。当院の場合はさらに患者さんの体力をエルゴメーター(自転車こぎのような機械で心拍数の変化を読み取り、体力を測定する装置)を用いて測定します。それらの結果から、その人の膝や腰にあった運動プログラムを作成し、徐々にレベルを上げていきます。

 この方法のメリットは医学的な診断と体力に合った運動を行うため変形のある膝や腰を痛めず、その人に必要な筋力を集中的につけられる点です。ただ、全ての整形外科が運動療法を行っているわけではないので事前に確認が必要です。

 健康で充実した生活のために、まずはご自宅などで、手軽な片足立ちとスクワットを毎日の習慣にすることから始めていただきたいと思います。

(長崎市新大工町、おおぞら整形外科 院長  原田 真一)

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