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2015年10月5日掲載

「飛蚊症」

 明るい所や白い壁などを見つめた時、目の前に糸くずや虫のような形の浮遊物に気付いたことはありませんか。しかも、その浮遊物は視線を動かしても一緒に移動し消えない…。このような症状を医学的に「飛蚊(ひぶん)症」といいます。

 これらの症状は目の中の「硝子体(しょうしたい)」というゼリー状の透明な物質が変化することで起こります。外からの光は硝子体を通り「網膜」に届くのですが、何かの原因で硝子体に「濁り」が生じると、明るい所を見たときにその影が網膜に映るのです(図参照)。影の形は糸くず、泡、水玉、輪状などさまざまです。

 この濁りの原因には生理的なものと病的なものがあります。硝子体の血管は普通、生後なくなりますが、その名残りがあると飛蚊症を感じることがあります。加齢で硝子体がゼリー状から液状に変わり、次第に縮んで網膜からはがれる「硝子体剥離(はくり)」という変化でも感じます。また、強い近視の方は年齢が若くても硝子体剥離が早い時期に起こりやすいとされます。これらの状態はみな生理的なものなので、治療の必要性はなく経過を見ます。

 一方、病的な原因によるものは早期治療が重要です。網膜に穴があく「網膜裂孔(れっこう)」やその穴を中心に網膜がはがれる「網膜剥離」、目の奥(眼底)に出血が起こりその血液が硝子体に入る「硝子体出血」、ぶどう膜という組織が炎症を起こす「ぶどう膜炎」などの病気により飛蚊症が起こるときがあります。放置すると失明する場合もあり、それぞれの病気に対する適切な治療が必要です。

 飛蚊症を感じたら、早めに眼科で検査を受けることが大切です。一度受診した後、症状に変化(影の数が多くなる、大きくなるなど)を感じた際にも診てもらいましょう。早期発見、早期治療があなたの目を守ります。

 なお検査は目薬で瞳の大きさを拡げた(散瞳)状態で眼底検査を行います。目薬の作用でピントがぼやける状態が数時間続きますので、車での来院は控えてください。

(長崎市滑石4丁目、松村医院 院長  松村 絹子)

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