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2015年11月2日掲載

「C型慢性肝炎の新しい治療薬」

 C型肝炎ウイルスに感染すると、3人に1人は急性肝炎後に治癒し、3人に2人は感染が持続し慢性肝炎へ移行します。持続感染した2人のうちの1人は肝機能正常で推移し、残る1人には肝機能障害が現れます。持続感染しても肝機能正常の場合には慢性肝炎はゆっくりと進行しますが、肝機能障害が現れた場合には高率に肝硬変、肝細胞がんへと進展します。

 肝臓がんは日本の男女ともに臓器別のがん死亡者数の上位を占めていますが、肝細胞がんの最大の原因疾患はC型慢性肝炎です。従って、C型慢性肝炎の治癒が肝細胞がんで亡くなる方を減らすことにつながると考えられています。C型慢性肝炎の治療目標はC型肝炎ウイルスを駆除することです。

 C型慢性肝炎の治療薬として1992年からインターフェロンが用いられるようになりました。日本のC型肝炎ウイルスの遺伝子型の多くは1型か2型であり、最も治療が効きにくい1型高ウイルス量の方では、インターフェロンによるウイルス駆除の成功率は5〜10%でした。

 2004年にはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が用いられるようになり、1型高ウイルス量の方での成功率が約50%にアップ。11年にはペグインターフェロンとリバビリンとテラプレビルの3剤併用で成功率が約70%、13年にはペグインターフェロンとリバビリンとシメプレビルの3剤併用で成功率が約90%となりました。

 治療の成功率の改善はすばらしい成果ですが問題もありました。インターフェロンやリバビリンの副作用がつらいものだったからです。ペグインターフェロンになりインターフェロンの副作用はやや軽減されたものの、治療開始当初のインフルエンザ様症状や倦怠(けんたい)感、食欲不振、抑うつなどは高齢の方や合併症がある方には厳しいものでした。リバビリン併用では貧血も問題でした。

 昨年9月には1型を対象にインターフェロンを必要としない、ダクラタスビルとアスナプレビルによる内服治療が可能となり、今年9月から新たにソフォスブビルとレジパスビルの内服治療が可能となりました。これらの治療はC型慢性肝炎の薬剤耐性変異を調べる必要があったり、腎機能障害の有無で使い分けを検討する必要があったりしますが、治療成功率は95%を超えるとされています。インターフェロンと比べて明らかに副作用が少なく、従来は治療困難と考えられていた高齢の方や、一部の肝硬変の方も内服可能です。

 これらの治療薬は非常に高額ですが、医療費の助成制度があり、月に1万円ないし2万円の自己負担で治療を受けることができます。肝炎医療費助成に係る診断書は日本肝臓学会認定肝臓専門医が記載することになっていますので、治療を希望の場合にはまずは専門医に相談してください。

 肝炎治療に係る医療費助成や診断書を作成できる医療機関の一覧は県医療政策課のホームページに詳しく記載されています。受診希望の方が病院を選択するときの参考としてください。

(長崎市宝町、井上病院 内科部長   柳 謙二)

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