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2015年11月16日掲載

「子どもの感染性胃腸炎」

  感染性胃腸炎はウイルス(ノロ、ロタ、アデノなど)や細菌(病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター菌など)によって引き起こされる胃腸炎です。ウイルスによる胃腸炎は毎年冬になると保育園、幼稚園、学校などで流行しますが、今回はその主な原因となるノロウイルスとロタウイルス感染症についてお話ししたいと思います。

 ノロウイルス感染症は11月から3月くらいに流行が見られ、乳幼児から大人まで罹患(りかん)する胃腸炎です。このため家族中でかかったり、高齢者の施設などでは集団感染を起こしたりすることがあります。

 これに対しロタウイルス感染症は12月から4月くらいにかけて流行しますが、罹患するのはほとんどが乳幼児で、大人の流行はあまり見られません。これは、ロタウイルス感染症は以前にかかったことがあると長期間免疫ができるため、かかりにくくなるか、かかっても軽くすむようになるためです。

 ノロウイルス感染症は一度かかって免疫ができても数か月でなくなってしまうため、何回もかかったり、大人にも流行が見られたりします。

 感染は、便や嘔吐(おうと)物に含まれるウイルスが手指などを介して口に入ったり、乾燥して舞い上がったウイルスを吸い込んだり、汚染された食品を摂取したりすることで引き起こされます。

 ウイルスが体内に入って症状を出すまでの期間(潜伏期間)は1〜3日くらいです。

 症状は嘔吐、下痢(ロタウイルスでは白色から黄白色)、発熱が主ですが、ロタウイルス感染症の方が症状の期間が長く(ノロウイルスは数日、ロタウイルスは1週間くらい)、重症化しやすい傾向にあります。

 治療は対症療法ですが、重要なのは脱水を起こさないように水分補給を行うことです。最近は子ども用の経口補液飲料などがありますので、少量を頻回に与えるようにしてください。嘔吐や発熱が続いて脱水が強くなれば点滴治療が必要になる場合もあります。

 登園や登校は嘔吐や下痢が落ち着いて元気になれば可能ですが、発症後1週間から1カ月は便中にウイルスが排出されます。元気になっても感染力はゼロではありませんので、少なくとも発症後1週間は周囲への感染に注意が必要でしょう。

 最も重要な予防法は手洗いです。おむつ交換やトイレの後、食事の前には流水とせっけんでしっかり手洗いしてください。アルコールでは殺菌効果は期待できません。次亜塩素酸系消毒液(家庭用塩素系漂白剤を200倍程度に薄めて作ることもできる)で、便や嘔吐物が付着した床、トイレ、おもちゃなどを消毒してください。

 ノロウイルスにはワクチンはありませんが、ロタウイルスには乳児に対する経口ワクチンがあります。生後6週から24週までに2回、または32週までに3回服用します。まだ定期予防接種ではありませんが、予防効果の高いワクチンです。かかりつけ医に相談の上、予防接種を受けられることをお勧めします。

(長崎市深堀町1丁目、長崎記念病院小児科 部長  上原 豊)

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