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2015年12月7日掲載

「在宅医療」

 昨今、テレビや新聞で「在宅医療」「地域包括ケア」といった言葉をよく目にするようになりました。これは日本の高齢化社会化に対応し、政府が「医療や介護などを必要とする高齢の方や病気の患者さんが、住み慣れた自宅、地域の施設で、家族、地域とのつながりを保った状態で生活、療養していくことができるような体制を構築する」事業を進めているためです。

 そのために必要なサービスは「医療・看護」「介護・リハビリ」「保健・予防」が挙げられます。そして、病院や施設に通って行うものと、種々の医療スタッフが自宅、施設に出向いて行う「在宅医療・介護・リハビリ」サービスに大きく分けることができます。

 「在宅医療」と聞くと、患者さんが病気の際に医師がお宅を訪問し、診察、投薬などを行うという一般的な「往診」を想像されると思います。いわゆる往診も在宅医療の大切な診療の一つでありますが、現在の在宅医療はさらに多様な形で患者さんの健康管理、診療を行っています。

 例えば、「訪問診療」は自宅療養中の患者さんが安定した状態のときも定期的にお宅を訪問して健康状態の診察や薬の処方をしたり、呼吸、消化器疾患、神経難病などの患者さんが自宅で生活しながら酸素療法、点滴療法、経腸栄養療法を行うのを管理、サポートしたりします。がんや難病患者さんの痛みや苦痛を緩和し、自宅で家族と生活していくのをサポートする「在宅緩和ケア」「在宅看取(みと)り」などもあります。

 これらの在宅医療は医師、歯科医師、薬剤師と「在宅看護」「在宅介護・リハビリ」のスタッフとの連携により行われます。

 在宅医療ではこの「連携」が要となります。診療所や病院から医師が、地域に拠点を持つ看護ステーションから訪問看護専門の看護師が、ヘルパーステーションやリハビリ施設からヘルパー、リハビリ担当者が、一人の患者さんの詳しい情報を共有し、それぞれ患者さんのお宅に訪問します。

 状態が悪い患者さんの所へは医師と看護師は別々に、なるべく頻回に患者さんを観察できるように訪問し、状況を共有します。状態が急変した際に入院のできる病院との連携も確保されます。

 このように各部門の専門スタッフが連携し、多くの目で頻回に一人の患者さんを診ていくことで、在宅医療を内容的、時間頻度的に充実させることができるのです。

 特に長崎では「長崎在宅Dr.ネット」という在宅医療を担う医師のネットワークを用いて患者さんの情報を共有し、複数の担当医師によって診療を行うことで、病院に引けをとらない療養環境の確保、24時間体制での対応強化を目指した事業が進んでいます。

 在宅医療について詳しく知りたい方、在宅医療をご検討の方は病院の地域連携室、在宅医療支援診療所、地域の訪問看護ステーションにお問い合わせください。長崎市では前述の「長崎在宅Dr.ネット」や「長崎市包括ケアまちんなかラウンジ」のホームページもご参照ください。

阿保外科医院 副院長(長崎市宿町)  阿保 貴章

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