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2016年1月18日掲載

「『認知症』家族の負担減らすには」

 2010年度時点で65歳以上の高齢者の15%、約439万人が認知症で、正常と認知症の中間状態の高齢者が13%、約380万人といわれています。そして、今後15年間にわたって「認知症の人」は増加し続けると推定されています。約5人に1人が認知症となる見込みであることを考えると、恥ずかしいことでも隠すことでもありません。認知症は「なったら終わり」の病気ではなく、「なってからが長く続き、どう関わっていくか」が課題となる進行性の病気なのです。

 「認知症の人」の約半数が自宅で暮らしています。これを考えると「認知症の人」だけでなく、「家族」をどう支えるかも重要になってきます。

 「認知症の人」本人に対しては本人のペースや思いを尊重し、強制せず、無視せず、子ども扱いをせず、怒らないことが基本です。

 家族介護では、▽望むと望まないとにかかわらず介護の立場に立たされる▽介護と家事の時間を分けることができない▽24時間365日休みなく続き、気分転換ができない▽介護をめぐる家族問題が発生する▽介護者への家族や身内からの理解が得難い−といった実態があります。介護者の悩みとしては▽体が疲れる▽睡眠不足になりがち▽自由な時間がない▽将来への不安感がいつもある▽気持ちがふさぐ▽家庭が不安定になる−などがあります。

 これらの負担軽減策としては▽認知症について正しい知識を持つ▽現実と向き合い、少しずつ現実と折り合いをつける▽今までの生活にこだわらず「介護は自分の人生の一部に過ぎない」という考えに切り替える▽完璧にしようとしない▽時間をつくり好きなことをする▽介護に全力投球しない▽1人で介護を抱え込まない▽他人をボランティアと思う▽仲間をつくり悩みを共有する(家族会に参加する)▽「認知症の人」にもできることはしてもらい、お互い気兼ねせず言いたいことを話して理解し合う−などがあります。

 また、介護負担が増大する要因には「認知症の人」の精神・行動の障害があります。それらの症状は、その人のことをよく理解し、適切な対応をしないと出現しやすく、介護者は終日目が離せない状態になります。そうなると介護者の身体的・精神的疲労を増加させ、介護を「家族」だけで担い切れなくなります。

 これに対しては▽世間体や義務感で無理をしない▽認知症の専門医とかかりつけ医の2本立てで対応してもらう▽介護サービスを利用する−などの方法があります。在宅介護を継続していくためには、介護者の気持ちを理解し、医師、介護職、地域の人々らがチームを組んで支えあう必要があるのです。

 そして、家族問題へのアプローチとしては▽関係者を介護に向き合わせる▽家族の役割分担を決める▽「手を出さないのであれば口を出さない」の原則を守る▽第三者である援助者を入れてみる▽関係者に介護者の気持ちを伝える−などがあります。こうした対応をしていくと「介護者」の負担は徐々に減っていくと考えられます。

長崎市医師会理事  中谷 晃

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