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2016年3月21日掲載

「肺炎の予防」

 肺炎とは病原微生物が肺に感染しておこる病気です。重症の場合には死に至りうる病気です。特に高齢者肺炎の死亡率は高く、超高齢社会の日本では肺炎が死因の第3位を占める病気となっています。今回は肺炎の予防に有効な幾つかの方法をご紹介します。

 一つ目は肺炎の引き金となりやすい風邪の予防です。風邪をひくと気道粘膜が傷つくため、肺炎にかかりやすくなります。風邪の予防といえば手洗い、うがい、マスクですね。これらはいずれも効果がありますので、普段から心掛けましょう。また、ヨーグルトを食べると風邪にかかりにくいことも分かっているのでお勧めです。

 二つ目は口腔(こうくう)衛生です。口の中に雑菌が多いと、菌が肺に侵入して肺炎の原因となります。毎食後には歯磨きをし、できれば定期的に歯科を受診し、専門的なクリーニングや歯磨きの指導を受けましょう。

 三つ目は栄養状態の改善です。栄養状態が悪いと、免疫力が低下し肺炎にかかりやすくなります。バランスの取れた食事が重要ですが、高齢者では上手に食事をするための工夫も必要です。歯の治療や入れ歯の調子を整える▽食べ物を誤嚥(ごえん)しないようにとろみをつける▽正しい姿勢で食べる▽一口ずつゆっくり食べる−といったことに気を付けましょう。

 四つ目は禁煙です。喫煙をしている人は肺炎にかかりやすく、治りにくいことが分かっています。今、喫煙をしている人は早くやめましょう。

 最後にワクチン接種について紹介します。肺炎の予防には「インフルエンザワクチン」と「肺炎球菌ワクチン」が有効です。インフルエンザにかかった後は肺炎にかかりやすい状態となるため、インフルエンザワクチン接種を受けることは肺炎予防につながります。毎年冬になったらインフルエンザワクチン接種を欠かさず受けましょう。

 続いて肺炎球菌ワクチンについて説明します。肺炎球菌は最も肺炎の原因菌となりやすく、重症の肺炎を引き起こしやすい細菌です。現在使用できる肺炎球菌ワクチンには「23価肺炎球菌莢膜(きょうまく)ポリサッカライドワクチン」(23価ワクチン)と「13価肺炎球菌結合型ワクチン」(13価ワクチン)の2種類があり、いずれのワクチンも季節を問わず、体調のよい時にいつでも接種できます。

 23価ワクチンは高齢者対象の定期接種に組み込まれており、1回の接種で約5年間効果が持続します。5年以上たつと効果が弱くなるため、5年ごとに繰り返し接種することをお勧めします。もう一つの13価ワクチンは効果が長く持続するため、繰り返しの接種は必要ないとされています。

 二つのワクチンは作用の仕組みが違うことから、両方のワクチンを接種することでより高い効果が出ると期待されています。ぜひ毎年のインフルエンザワクチンと、2種類の肺炎球菌ワクチン接種を行いましょう。

 日本呼吸器学会は2013年から「ストップ肺炎キャンペーン」を展開しており、ホームページに啓発資料を掲載していますので参照してください。

長崎大学病院第2内科助教 今村圭文

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