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2016年4月18日掲載

「アトピー性皮膚炎」

 アトピー性皮膚炎は顔や肘の内側、膝の裏側など基本的に左右対称にさまざまな発疹を慢性的に繰り返す病気です。年齢により発疹の分布にはある程度の特徴があり、乳児期には頭、顔から始まり徐々に体や腕、脚に広がることが多くなります。

 幼少時期では首、肘の内側、膝裏の発疹が多くなり、思春期や成人では上半身に多いという特徴があります。発疹は長期間続くことが多いのですが、小さい時に発症したアトピー性皮膚炎の場合は、小学校を卒業する年齢くらいまでに6〜7割の患者さんは治ってしまうか、かなり軽くなるともいわれていますので、しっかり治療していきましょう。

 治療薬を大きく分けると、外用薬としては、ステロイド外用薬、免疫抑制剤、保湿剤があります。内服治療薬としては、抗アレルギー薬、免疫抑制剤があります。紫外線を治療に用いることもあります。

 炎症が強い場合には、抑える必要があります。最もよく使用されるのがステロイド外用薬になります。副作用を心配し過ぎて薬を塗る量が少な過ぎる患者さんも多いように思われます。外用する部位や症状の強さによって薬の強さを変える必要がありますが、適切な強さのものを適切な部位に使用すれば非常に効果の高い治療薬になります。必要以上にステロイド外用薬の副作用を心配せずに主治医の先生と相談しながらしっかりと使用していくことが大事です。

 顔には、免疫抑制剤の外用薬もよく用いられます。効果も高いのですが、少し刺激を伴うこともあるので使い始めには注意が必要です。

 症状が強い場合には、飲み薬で抗アレルギー薬を一緒に使うとよりよい効果があることも認められています。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは、ハウスダストやダニなどさまざまなアレルゲンに対して陽性反応を示します。ぜんそくやアレルギー性鼻炎など他のアレルギー性の病気を一緒に持っていたりもします。そのため以前はアレルギーの側面が重視されていましたが、近年は保湿の重要性がクローズアップされています。

 アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が弱いことが報告されています。そのため、皮膚の天然保湿成分などが皮膚から抜けやすくなり、ドライスキンから湿疹を引き起こし、その結果、外部からのアレルギー反応を引き起こしやすくなっています。この悪循環を断ち切るためにも保湿を怠ってはいけません。

 興味深いことに最近の研究で、生まれた時からしっかりと保湿をしていた場合には、アトピー性皮膚炎の発症率が下がることが報告されています。このことからもこの病気の発症には皮膚の保湿が重要な役割を果たしていることが分かると思います。

 皮膚の乾燥を悪化させる原因としてせっけんの使い過ぎもあります。保湿をしているのになかなかドライスキンが軽快しない場合には、せっけんの使い過ぎかもしれないので注意しましょう。

(長崎市矢上町)おがわ皮ふ科・アレルギー科 院長  小川 文秀

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