>>健康コラムに戻る

2016年5月16日掲載

「大腸がん」

 加齢とともに黒かった髪が白髪になるように、大腸がんも遺伝子に傷が付くことで大腸粘膜の細胞から腺腫という良性のポリープができ、一部がん化するものがほとんどです。腺腫を介さず直接粘膜に発生するがんは、一部の潰瘍性大腸炎など特殊な場合を除いてまれです。ですから、がんになる前の状態のポリープを取り除くことが大腸がんの予防となります。

 発生したがんは、次第に大きくなり大腸の壁に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節、肝臓、肺など別の臓器に転移します。他の多くのがんと同様に、早期の段階では特有の自覚症状はありません。進行すると血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、残便感、おなかの張り、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などがあります。

 中でも出現の頻度が高い血便は、痔(じ)などの良性疾患でも同じような症状が起こります。実際に突然の腹痛を伴わない真っ赤な下血は、原因のほとんどは痔からの出血です。しかし肛門に近いがんからの出血の可能性も十分に危惧されます。出血があった場合は痔が原因だとは決めつけずに、早期受診することが肝要です。

 大腸がんにかかる割合は、40歳代から次第に増加し、50歳代で加速。高齢になるほど高くなります。大腸がんで亡くなる患者さんの割合は1990年代半ばまで増加し、その後は少しずつ減る傾向にあります。男女とも、大腸がんの生存率は他のがんと比べて高くなっており、がんの中でも比較的おとなしいともいえるでしょう。

 大腸がんの発生要因として、生活習慣では飲酒や肥満、食生活では赤肉(牛・豚・羊の肉)や加工肉の摂取増加が指摘されています。遺伝的な要因もあり、近親者に大腸がんになった人がいる人は注意が必要です。

 大腸がんの発見には、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査があります。これは公費補助があります。陽性となれば、二次検査として全大腸内視鏡検査が推奨されています。

 気を付けていただきたいのは、あくまでも便潜血検査は大腸からの出血をみている検査であることです。早期の大腸がんや平たいがんは、出血することは少なく、当然いつも出血しているようながんは、既に進行している場合が多いということです。進行がんの90%は便潜血反応が陽性です。しかし便潜血反応が陽性の人と、陰性の人に内視鏡検査を行うと、早期大腸がんが発見される割合は同じとの報告もあります。つまり健診などの便潜血反応陽性を契機に発見された早期大腸がんのほとんどは、痔などが原因で偶然発見されているものと考えられます。

 胃がんと同様、大腸がんも早期に発見できれば内視鏡でがんを完全に取り除ける可能性が高くなります。以上の理由から、40歳代〜50歳代以上の人で、今まで全大腸内視鏡検査を受けたことがない人は、一度は受けられることをお勧めします。

(長崎市為石町)おにつか内科・消化器科 院長  鬼塚 康徳

>>健康コラムに戻る