>>健康コラムに戻る

2016年7月4日掲載

「手足口病、ヘルパンギーナ」

 蒸し暑い季節となりました。例年この時期はお子さんを中心に「手足口病」「ヘルパンギーナ」という夏風邪が流行します。

 手足口病とヘルパンギーナはエンテロウイルスによる感染症です。このウイルスは人から人へ感染します。感染経路は主に唾液と便です。感染したお子さんの唾液や便に触れた場合は手洗いをしっかり行ってください。おむつ交換時も注意を。周産期には母子感染も起こり得ます。潜伏期は1〜5日です。不顕性感染(感染しても症状が出ない)も多く、成長とともに抗体を持つ割合が大きくなるため、発症するのは主に乳幼児です。

 手足口病は軽度の発熱の後、食欲不振、咽頭痛などで始まります。その後手のひら、足の裏、足の甲、口の中や舌に2〜5ミリほどの赤い小水疱(すいほう)や発疹が多発し、時にお尻や膝など他の部位にもみられます。およそ3〜7日で治癒します。

 ヘルパンギーナは突然の高熱で始まり、口の奥の天井付近に1〜5ミリの水疱や潰瘍を数個認めます。多くはのどの痛み、よだれ、食欲減退を伴います。熱は1〜4日、口の中の症状は3〜7日でよくなります。

 両者とも口の中の痛みのため経口摂取を嫌がることがあります。そのため脱水症を引き起こすことがあります。他の合併症としては手足口病では無菌性髄膜炎、ヘルパンギーナでは熱性けいれんがあります。まれではありますが、脳炎、脳症、心筋炎などがあります。新生児に重症例が多い傾向がありますのでより注意が必要です。

 治療は特別なものはなく、解熱剤などの対症療法です。インフルエンザのような坑ウイルス薬はありません。口の中が痛く食事が困難な場合、喉越しのよいプリンやゼリー、アイスクリーム、冷めたおじやなどで栄養を取ってください。

 脱水になる可能性があるため水分は十分取ってください。酸っぱいジュースはしみますので避けた方がいいと思います。抗生剤(抗菌薬)は基本的には不要です。ウイルス性感染症に抗菌薬は無効です。現在抗菌薬の効かない耐性菌が増えて問題となっています。不必要な抗菌薬使用は耐性菌を増やします。また、近年われわれの健康(免疫力、アレルギー、肥満など)に腸内細菌叢(そう)(腸内フローラ)が関わっていることが徐々に解明されています。抗生剤はその腸内細菌にも悪影響を及ぼします。しかし経過中、体力が減退し二次的に細菌感染症になることもあるため抗生剤が必要なこともあります。主治医の指示に従ってください。

 登園・登校は熱が下がり、口の中の痛みがなく、元気であれば可能です。すでに述べましたが、子どもは容易に脱水症になりますし、両疾患には髄膜炎、脳炎、心筋炎の合併もあります。水分の摂取不良でおしっこが少ない、ぐったりしている、何度も吐く、その他「なにかおかしい」と感じたらすぐかかりつけ医に相談しましょう

 (長崎市網場町)たちばなベイクリニック小児科 今村善彦

>>健康コラムに戻る