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2016年7月18日掲載

「原発性自然気胸」

 気胸は、何らかの原因で胸腔(きょうくう)内に入った空気によって肺が圧迫され虚脱した状態です。自然気胸とは明らかな外傷によらない気胸です。肺表面の胸膜下にある気腫性肺嚢胞(のうほう)(ブラ、ブレブ)が突然破れ、胸腔内に吸気が漏れて発症する原発性自然気胸と肺気腫や肺がんなどの肺疾患の経過中に発症する続発性自然気胸があります。ここでは原発性自然気胸についてお話します。

 原発性自然気胸は、10〜20代の背が高くやせ形の男性に多く発症しますが、背の低い人、太った人、年配の人、女性にも発症します。ブラやブレブの破裂は運動時以外の安静時に起こります。症状は胸痛、呼吸困難、せきなどです。

 気胸の診断は胸部エックス線検査で行います。軽度の気胸は肺の頂点が鎖骨より上方に認められる場合。中等度気胸は肺の頂点が鎖骨下方に認められる場合。高度気胸は肺がほとんど虚脱した状態です。胸部のCT検査では、気胸の程度、ブラやブレブの有無や部位、範囲、他の肺疾患の有無などを確認します。

 治療法には手術を行わない保存的な治療と手術による方法があります。保存的治療は軽度の気胸の場合、症状が軽ければ通院で経過観察します。気胸が進行しなければ胸腔内に漏れた空気は2〜3週間で自然に吸収され治癒します。

 中等度から高度の気胸の場合は入院して管(ドレーン)を胸腔内に留置し、胸腔内に漏れた空気を体外に排出します。肺からの空気漏れがなくなり、肺が元のように膨張すれば気胸は治癒しドレーンは抜去します。

 全身麻酔手術の適応には(1)再発を繰り返す(2)空気漏れの持続(3)両側性気胸(4)著明な血胸(胸腔内に出血)(5)肺の再膨張困難(6)社会的適応−があります。中等度以上の気胸で空気漏れが1週間以上継続したとき、肺の再膨張が困難なときには手術の適応になります。また気胸早期に胸水を伴う場合には血胸の可能性があり緊急手術を要することもあります。

 気胸は保存的に治癒しても30〜50%は再発します。また気胸の手術は、破裂したブラやブレブを切除する必要があるので発症時に行います。そのため最近では保存的に治癒可能な気胸でも、ブラやブレブがある場合には手術を勧めることもあります。特に若年者では、受験時期の再発を考慮し手術を行うこともあります。

 手術の方法は、内視鏡を用いた胸腔鏡下手術と、開胸による手術があります。当院でもほぼ全例胸腔鏡下で行っています。脇の肋骨(ろっこつ)と肋骨の間に約1センチの穴を3カ所開け、胸腔鏡や鉗子(かんし)、肺を切る器械を挿入して破裂したブラやブレブを含めた肺部分切除を行います。

 開胸術に比べ手術創が小さく、術後の痛みも軽くて済みます。入院期間も5日ほどと短く、手術後の再発率は3%程度で開胸術とほぼ同等です。気胸発症以前に鎖骨上方や肩の軽い痛みを感じ、数日で自然に軽快した経験のあるも人います。恐らく、ごく軽度の気胸を繰り返していたとも考えられます。軽い症状でも放置せず、一度専門医の診察を受けられることをお勧めします。

 (長崎市宝町)井上病院副院長 仲宗根朝紀

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