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2016年8月15日掲載

「婦人科における腹腔鏡手術」

 婦人科領域の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術の進歩には目覚ましいものがあります。腹腔鏡はおなかの中を見る内視鏡で、婦人科領域では1992年に同手術が保険収載されました。それから現在まで全国的に急速に普及し、手術器材や器具の開発、手術法の改良・発展には目を見張るものがあります。

 今や子宮筋腫や良性卵巣腫瘍、子宮内膜症といった良性疾患のほとんどの手術が腹腔鏡で対応可能になりました。今後さらに患者さんのニーズが高まると思われる婦人科領域の腹腔鏡手術について紹介します。

 腹腔鏡手術は患者さんの体への負担が軽い低侵襲手術の代表選手です。術後の痛みが軽いので手術翌日には歩行を開始し、退院や社会復帰も早いのが大きな利点です。そのため腹腔鏡手術が簡単な小さい手術であると誤って解釈されることもしばしばです。

 腹腔鏡手術の適応にあたっては、医療者側がその特性を熟知することはもちろん、手術を受ける患者さんに同意してもらうインフォームドコンセントが重要になります。そのため十分に時間をかけて説明し、正しく理解してもらえるよう努めています。

 良性疾患に対する腹腔鏡手術が広く普及したとはいえ、現時点では特定の施設においてのみ行われています。悪性疾患に対しても初期子宮体がんに限り、2014年4月から保険適用となりました。子宮頸(けい)がんに対しても先進医療が導入されるまでに至っています。このことは多くの患者さんに腹腔鏡手術の恩恵が広まることを意味しています。

 腹腔鏡手術において、症例の選択に問題があったり、手術手技が未熟なために起こる医療事故が社会問題となっています。婦人科領域においては、日本産科婦人科内視鏡学会主催の実技研修会が年に4回開催されています。

 学会のトレーニングシステムにより、器具・器材の基本構造、疾患別の各論や手技、合併症に対するトラブル解決法などについて講義があります。器具・器材実習、縫合トレーニング、動物(幼若ブタ)を用いた実技トレーニングなども行われています。
 この研修会に参加することにより、系統だった知識と技術の習得を目指すことができるのです。また、日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定制度が2002年8月から施行されています。

 これは技術認定医しか腹腔鏡手術を行ってはならないという意味ではありません。手術に携わる医師の技術と知識を評価し、安全かつ円滑に施行する者を認定。婦人科領域における腹腔鏡手術の発展と普及を目的としたものです。手術手技向上のための日頃の研さんは、腹腔鏡手術に携わる者の責務であると考えます。


 (長崎市片淵2丁目)済生会長崎病院産婦人科部長 平木宏一

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