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2016年9月5日掲載

「健康寿命を延ばすために」

  わが国は世界でも有数の長寿国です。今年7月27日に厚生労働省が発表した平均寿命は男性80・79歳、女性87・5歳でした。毎年着実に延びており今後もこの傾向は続くと思われます。

 平均寿命が延びるのは良いことですが、問題になるのは「いかに健康に長生きするか」です。

 「健康寿命」という概念があります。健康に問題なく健やかに日常生活を送れる期間のことです。平均寿命と健康寿命の差が大きいほど介護を要したり、入院生活を送る期間が長くなったりします。2010年度では平均寿命と健康寿命の差が男性で9・13年、女性で12・68年ありました。

 13年度の国民生活調査(厚生労働省)で介護が必要となった原因疾患が挙げられています。1位が脳血管疾患(脳卒中)(18・5%)、2位は認知症(15・8%)、3位は高齢による衰弱(13・4%)、4位は転倒による骨折(11・8%)、5位は膝、股関節などの関節疾患(10・9%)でした。私たち整形外科医が携わっている疾患は4位の転倒による骨折と5位の関節疾患ですが、両者を合わせると22・7%と堂々の1位になります。

 この割合を減らしていくことが整形外科医の課題になります。日本整形外科学会(日整会)では運動器(足腰)の障害により要介護になるリスクが高まった状態をロコモティブシンドローム(運動器症候群、ロコモ)と呼び、07年から提唱しています。
 ロコモの判定に利用していただきたいのがロコモ度テストです。ロコモ度は「1」(予備軍)と「2」(明らかな機能低下)があります。片脚で40センチの高さから立ち上がれないとロコモ度1、両脚で20センチの高さから立ち上がれないとロコモ度2と判定されます。

 ロコモと判定された場合の対処は、ズバリ適度な運動です。日整会では簡単に自宅でもできるロコトレを推奨しています。ロコモ度テストとロコトレについてはインターネットで検索できますのでご参照ください。

 日々関節痛や腰痛の方の診療に当たる中で、疼(とう)痛には、鎮痛剤や湿布薬、注射、リハビリによる緩和を図っています。同時に、できる範囲で運動していただくよう勧めています。

 腰回りの筋肉は天然のコルセット、太ももの筋肉は天然の膝サポーターといえます。運動することの意義は、筋力の維持増強により、痛みの緩和や日常生活の向上を図ることができることにあります。逆に運動しないと全身の筋力低下を生じ、それに伴い足腰の支えも低下。疼痛の増悪や日常生活のさらなる低下を招くことになります。

 どういう運動が良いかについてはロコトレもありますし、グラウンドゴルフやゲートボール、ウオーキング、体操、畑仕事などをしている人もいます。自分に合ったものを続けていただければ差し支えないと思います。

 今後の生活を健康で快適にするためにロコテスト、ロコトレを活用いただければ幸いです。分からないことは整形外科医に気軽にご相談ください。

 (東彼波佐見町)八並整形外科・リハビリテーション医院院長 八並幹

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