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2016年9月19日掲載

「中高年のスポーツ傷害」

 
 最近中高年のスポーツ人口が増えており、それに伴って中高年のスポーツ傷害の件数も増えてきているといわれています。スポーツが健康に良いことは、疑いのないところだと思いますが、やり方を間違うとかえってけがや痛みの原因となります。せっかく行うのであれば、正しく理解して有効に利用したいものです。今回はそのために役に立つ知識を皆さんにいくつかご紹介したいと思います。

(1)スポーツ「外傷」とスポーツ「障害」
 スポーツ外傷とは、スポーツの最中に大きな力が加わって、1回の損傷で発生するものです。アキレス腱(けん)断裂などがその例です。これに対してアキレス腱炎など、一度に加わる力は小さくても繰り返すことで慢性的に起こるものをスポーツ障害といいます。

 タイトルの「スポーツ『傷害』」は、その二つを合わせた言葉になります。「外傷」には損傷部位の修復と周辺の能力の回復が、また「障害」はプレーのフォームや準備、アフターケアの見直しなどが必要になります。

(2)筋トレ(筋肉トレーニング)とストレッチ
 筋トレは筋肉に負荷を与えて筋力を鍛えるための運動です。瞬発力や持久力アップにつながるだけでなく、関節の動きや関節周囲の組織強化になります。その一方で体に負荷をかけるのでかえって体を痛める可能性もあり、中高年の方は指導者について始めることをお勧めします。

 ストレッチは、筋肉や腱を伸ばすことをいいます。スポーツ傷害を予防し、筋肉の疲労を回復させるのに役立ちます。従来から、柔軟体操と呼ばれて反動をつけてするタイプのストレッチがあります。そういったストレッチは、普段運動をしている人や、柔軟性が高い若い人にはいいのですが、中高年の方には反動をつけずに自分の力だけで伸ばすようなストレッチをお勧めします。

(3)向いているスポーツ
 もちろん興味があるスポーツをすることは前提ですが、年齢が上がってくると、心肺機能の低下や筋肉の質の低下は否めません。例えば高血圧や心臓病があるような人は激しいスポーツをすると負荷が大きくなってしまいます。ランニングよりはウオーキングを勧めます。可能であれば、ジムのウオーキングマシンなど、人の目があるような場所での運動が推奨されます。

 また、変形性膝関節症といった軟骨のすり減りがあるような人は、荷重のかかる運動を多くするとますます軟骨がすり減る可能性があります。プールウオーキングや足上げトレーニングといった荷重の軽い運動を中心に行うといいでしょう。ウオーキングなどの荷重運動は、短時間で回数を分けてする方がお勧めです。生涯、運動をするためにも自分に合った運動を心がけましょう。

 知っていると役立つスポーツの知識はまだ他にもありますが、詳細は、お近くのスポーツ専門医にお尋ねください。正しい知識をもって、運動能力を維持し、健康寿命が長い人生を目指しましょう。

 (長崎市平和町)乗松整形外科医院院長 乗松崇裕

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