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2016年10月3日掲載

「色覚検査を希望者に」

 「先天色覚障害」は日本人男性の約5%、女性の約0・2%にみられます。学校を例にすると男女半数ずつの40人学級に1人はいる計算です。実は色覚が正常な夫婦でも10組に1人は色覚障害の子どもが生まれる可能性があります。

 日本の女性の約10%は保因者といわれます。自分の色覚は正常でも、色覚障害の遺伝子を持っているからです。その場合、夫が正常でも、確率的には息子の半数が色覚障害に、娘の半数が保因者になります。こうした事実が知られておらず、わが子の色覚に気付いていない親は多いのです。

 色覚障害といっても、世界がモノクロに見えるわけではありません。赤と緑など一部の色の組み合わせや、暗い場所など特殊な環境下で色を間違える可能性があるというだけで、日常生活にあまり支障はない人がほとんどです。しかし、生まれつきの見え方なので本人が気付いていない場合も少なくありません。

 そういう意味で、自分の色覚を知る機会として学校での定期健康診断は貴重でした。しかし小学4年生の全児童が対象だった検査は、2003年度より必須項目から除かれたのです。全国的には希望調査すらしない学校が多く、事実上の色覚検査廃止となり10年以上が経過しました。

 これに対し、日本眼科医会は、先天色覚障害は思いがけない色誤認で不利益や事故を招く場合があり、進路や就職を考える上でも学校健診での検査は必要と訴え続けています。

 色覚障害の場合、飛行機や船舶の運航、自衛官、警察官、消防士などの職種に就けないことがあります。12年に報告された日本眼科医会の調査では、自分の色覚を知らぬままそれらの職種を目指していた若者が多くいたことが判明しました。実際、就職試験で門前払いを受け、親を逆恨みし、自暴自棄に陥ったような若者もいたのです。

 こうした事態は国会でも取り上げられ文部科学省は14年4月「児童生徒が自己の色覚異常を知らずに不利益を受けることのないよう、希望者に学校で検査を実施する体制と保護者への周知」について通知しました。

 県眼科医会は円滑な学校生活や家庭生活、将来の進学や進路を考える上でも、小学校の段階で検査を実施すべきだと考えています。そのために色覚障害の説明を文書で各家庭に配布した上で、希望する児童にはプライバシーに配慮して色覚検査を実施し、眼科専門医による精密検査や健康相談が受けられる体制をつくることが重要です。保護者、学校関係者のご理解とご協力をお願いします。

 (雲仙市愛野町)中村眼科医院院長 中村宗平

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