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2016年11月07日掲載

「乳がんを見逃さない」

 乳がんにかかる人が全国で年々増加しています。身近な人が乳がんにかかった話を耳にすることもあるでしょう。自分はどうなのだろう、と頭をよぎる人もいるのではないでしょうか。今回は乳がんのチェックについてお話しします。

 まずは乳房に症状があるかないかが大事なポイントです。症状は、しこり、痛み、赤み、張り、乳汁が出るといったものです。これらの症状がない人は、市町の乳がん検診、または会社や人間ドックなどの乳がん検診を受けましょう。

 市町の乳がん検診には年齢による区別があり、長崎市の場合、30代は乳房超音波検査と視触診です。また40歳以上はマンモグラフィー(乳房のレントゲン)と視触診となります。2年に1度は必ず検診を受けましょう。元来、症状のない人を対象とする乳がん検診は、社会の財産である女性が乳がんで生命を失わないために実施しています。検診の受診率を上げるため、市町からクーポン券や補助があります。すべての人が乳がん検診を受診することを目標としていますので積極的に検診を受けてください。

 一方、症状のある人に乳がん検診は向いていません。乳腺を専門的に診察している乳腺科・外科などの病院またはクリニックでの「保険診療」を受けましょう。その症状に対して最大限の精密さで診てもらうことが肝要です。また保険診療の場合は、年齢や時期の制限はありません。20代や検診と検診の間の期間、妊娠期などでも受けられます。

 乳がん検診が無事に終わると結果が郵送で届きます。もし精密検査の指示があったときは、乳腺科・外科の診療を受けましょう。精密検査からは、症状がある人もない人も保険診療となります。また異常がない場合は、次の定期的な検診を受けることとなります。

 さて、検診と検診の間は絶対大丈夫といえるのでしょうか。現実として、答えはノーです。検診と検診の間に発見される乳がんを中間期乳がんといって、急に増大するタイプや発見されにくいタイプが含まれます。

 中間期乳がんの不利益を最小限にするためには、自己触診が重要であり、日ごろから乳房のセルフチェックを欠かさないようにしましょう。もし検診を定期的にしていても、症状・異常があるときは病院・クリニックを受診してください。自分の身は自分で守る姿勢を忘れないようにしましょう。

 乳がんは、他のがんと比較すると悪性度の強いタイプの頻度は少ない方であり、たとえ乳がんと分かったとしてもすぐに生命に直結する事態になることは多くありません。しかし、いたずらに検査を遅らせることで病状が進行すると、治療の負担が増えてしまいます。早期に正確な診断をして適切な治療を受けることが、乳がんに負けない秘訣(ひけつ)です。

 今からで大丈夫です。上手に乳房のチェックをしていきませんか。

 (長崎市金屋町)小林病院副院長 大野毅

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