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2016年11月21日掲載

「がんの放射線治療」

 みなさんは放射線治療という言葉にどういう印象をお持ちでしょうか。「危険」「怖い」「不安」。長崎は被爆地ですので、ネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれません。

 放射線治療は手術、化学療法と並んでがん治療の3本柱とされています。手術と違って「体に傷をつけない」、化学療法のように「体全体に作用しない」という特徴があり、患者さんへの負担が少ない治療法です。

 土、日、祝日を除いて、一日1回10分程度の治療を25〜30回、つまり5〜6週間行うことが基本的な治療のスケジュールになります。外来で治療すれば、仕事や自宅での生活を続けながら治療を受けていただくことも可能です。

 放射線治療には、医師、看護師、診療放射線技師、医学物理士がチームとして関わっています。放射線治療が必要かどうかの判断や治療計画の立案、正確な照射の実行を行います。

 治療中から治療後数年にかけて、効果や副作用など患者さんの体調チェックをします。あるいは高性能な放射線治療機器のメンテナンスなどを行っています。このようなチームが安全な放射線治療を実践しています。患者さんには、安心して治療に専念していただきたいと思います。

 放射線治療の技術的な進歩には目覚ましいものがあります。「定位放射線照射」と「強度変調放射線治療(IMRT)」は正常組織を避け、がん病巣だけを狙って照射する技術です。定位放射線照射は脳腫瘍、肺がん、肝臓がんに対して、IMRTは前立腺がんや頭頸部(けいぶ)がん(耳鼻咽喉科領域のがん)などの固形がんに対して適用され、それぞれ保険治療として認められています。

 これらの技術を用いれば、がん周囲の線量を低く抑えたまま、高線量の放射線をがん病巣へ照射することができます。通常の放射線治療よりさらに副作用が少なく、さらに効果の高い治療が実現します。

 最後に、みなさんにお伝えしたいことがあります。がんの治療は最初のステップが肝心です。がんの治療は不安を伴うものですし、一時的に身体的に苦痛を伴う状況も想定されます。(ただし最近の手術や抗がん剤、放射線治療の副作用対策は向上しています)

 情報があふれる今日では、患者さんにとって耳当たりのよいだけの治療法に触れる機会も少なくありません。しかしもし、がんと診断された場合、ご自分のがんと向き合い、主治医の先生とともに適切な治療を選択していただきたいと思います。放射線治療に携わる立場からも、みなさんのがん治療を支援させていただきます。

 (長崎市坂本1丁目)長崎大学病院 放射線科 山崎拓也

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