2017年2月6日掲載
「認知症の施策」
日本の平均寿命は年々延びていますが、日常生活に支障を来さない健康寿命との差は、約10年あります。要因として、脳卒中や認知症の罹患(りかん)が挙げられます。日本は2013年の統計で高齢化率が世界一。認知症は加齢に伴いリスクが増すので、認知症への施策が焦眉の急とされます。
厚生労働省は15年に「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を提言し、認知症疾患医療センターの設置や認知症サポーターの養成などが行われています。
認知症は「何らかの脳の病的変化によって認知機能が障害され、それによって生活に支障が現れた状態」と定義されています。重要な課題は、脳の変化で身体的、社会的な困難が現れ、さらに状況が複雑化すると、本人や家族の暮らしそのものが困難な状況に陥るリスクが高まることです。
複雑化の過程は、認知症の初期の段階ですでに萌芽(ほうが)が現れていると考えられます。従って、より早い段階での支援が必要となります。
従来の施策では、かかりつけ医と認知症疾患医療センター、地域包括支援センターの3者が関わってきました。
かかりつけ医は、家族や地域とつながりのある身近な所で、長期にわたってパートナーシップを築く役割を担います。多様な保健医療ニーズに対応し、他のサービス提供機関とも連携します。
認知症疾患医療センターは、認知症に関するさまざまな相談に応じます。認知症の診断や、心や体、社会的問題などへの対応を通して、かかりつけ医をバックアップする役割があります。
地域包括支援センターは高齢者の相談に応じ、支援について総合的に評価。他職種と連携しながら、地域サービスの利用を調整することが期待されています。
しかし実際には、これらの事業が相互に協働し、医療、介護などを含む統合ケアの導入を調整できていないのが現状です。そこで3者が協働するためのシステム統合の試みとして、「認知症初期集中支援チーム」の配置が考えられています。
この事業は、医療系、介護系、福祉系などによる多職種協働チームで臨みます。認知症の相談を受けて情報を収集し、家庭訪問やチーム員会議を実施します。かかりつけ医や認知症疾患医療センターと連携しながら、初期段階の認知症の人を支援していきます。
認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた良い環境で暮らし続けることが大切です。そのような社会を実現するためには、このシステムを利用して、医療や介護、居住や生活、家族、福祉権利擁護などの支援を早期に行っていく必要があります。
25年には認知症高齢者が700万人を超えるといわれています。高齢化率の高い本県でも対策は急務と考えます。認知症で何か困っていることがあれば、かかりつけの先生や地域包括支援センター、認知症疾患医療センターに早めに相談することをお勧めします。
(長崎市柿泊町)出口病院 認知症疾患医療センター長 出口 之
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