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2017年3月20日掲載

「胃がんの予防と早期発見」

 
 胃がんのリスク要因は主に三つあるといわれていますが、中でも重要なものがピロリ菌感染による慢性胃炎です。

 通常、ピロリ菌は、免疫が発達していない3歳くらいまでに感染し、以後大人になってから新たに感染することはほとんどないといわれています。言い換えると、一度除菌治療に成功したら、その後の再感染はほとんどありません。胃がん発生のもとになるピロリ菌感染や胃炎の有無は、長崎市が行っている「胃がんリスク検診」でも調べることができます(詳細は同市ホームページ参照)。

 他には、食事が脂肪やたんぱく質に偏る食生活の欧米化と喫煙習慣が、胃がんのリスク因子といわれています。野菜や果物を摂取したバランスの良い食事は、がんだけでなく生活習慣病の予防にも大切です。喫煙習慣は肺がんとの関連が知られていますが、実は胃がんや大腸がんのリスク因子でもあります。

 ピロリ菌に感染していると非感染者の3・2倍も胃がんになりやすいことが証明されています。日本は欧米や他の国と比べてピロリ菌感染の割合が高く、胃がんの発生頻度が格段に高くなっています。そのため日本の内視鏡医たちは世界一の内視鏡機器を開発し、技術を磨いてきました。今では5ミリ以下の微小病変が見つかることもあり、体への負担が小さい治療も行われます。

 胃がんは多発することも多く、10〜20%は同時期に複数の病変を認めます(同時性がん)。胃がんを内視鏡治療した患者さんの経過を見ていくと、毎年約3%に新しい胃がんが見つかります(異時性がん)。

 数あるがんの中でも、胃がんは早期に発見することで「治す」ことが可能です。胃の表面の粘膜にとどまっている病変は「早期がん」と呼ばれ、条件が合えば体に負担の少ない内視鏡治療が選択されます。

 早期の段階では、症状を伴うことはほとんどありません。つまり、症状が現れる前に発見することが重要であり、内視鏡検診は胃がん発見の最大の契機になります。しかし大変残念なことに、本県の胃がん検診受診率は全国で2番目に低く、それを反映して胃がん死亡率も高い水準で推移しています。

 大腸がんにも同様の傾向が見られ、特に本県の女性の大腸がん死亡率は全国ワースト2位(2012年調べ)という結果が報告されています。筆者自身も眼科医であった母を進行胃がんで亡くした経験があり、早期発見の重要性を誰よりも感じているところです。

 本県には現在約200人の消化器内視鏡専門医がおり、日々内視鏡技術の研鑽(さん)に励んでいます。がんが見つかるとしてもできるだけ早期のうちに発見できるよう、多くの人に内視鏡検診を受けていただきたいと思います。地域から進行がんをなくすこと、がんに苦しむ人を一人でも減らすこと。それがわれわれ内視鏡医の願いであり、目標です。自分自身のため、大切なご家族のためにも定期的に検診を受けましょう。

(長崎市網場町)たちばなベイクリニック内科  南 ひとみ

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