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2017年4月17日掲載

「逆流性食道炎」

 
 糖尿病や脂質異常症(高コレステロール血症)、高血圧症など、生活習慣が発症原因に深く関与している疾患を総称して「生活習慣病」といいます。近年このような疾患に肥満が関連した病態をメタボリックシンドロームと呼び、健康診断の際など耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。

 こうした現象の背景はやはり食事の欧米化です。加えてテレビゲームやインターネット環境が普及し運動不足となり、肥満者の割合が増加していることも大きな要因です。こうした生活習慣病や肥満の増加は、心筋梗塞をはじめとした循環器疾患や糖尿病などの代謝疾患だけでなく、乳がんや大腸がん、脂肪性肝疾患の増加など、さまざまな領域において多くの問題をはらんでいます。

 逆流性食道炎は、胃酸が胃から食道へ逆流し胸やけなどの諸症状を引き起こす疾患です。胸やけのほかに、酸っぱく苦いものが上がってくる呑酸(どんさん)やげっぷ、もたれ、みぞおちの痛みなども逆流性食道炎の代表的な症状です。逆流性食道炎は生活習慣病ではないものの近年の日本において増加傾向にあり、その原因の一つとして生活習慣の影響が考えられています。

 食習慣の欧米化が進む中、高脂肪食と逆流性食道炎の関連については以前から指摘されてきました。逆流性食道炎の原因となる胃酸逆流は食後に発生することがほとんどで、高脂肪食の摂取や一度に大量の食事を摂取することで誘発されます。

 このほか、かんきつ系の果実や酢といった酸性の食品、香辛料のきいた食事は胃酸逆流により胸やけを起こしやすい食品です。餅や和菓子といった日本古来の糖質の豊富な食品も胸やけを誘発します。アルコールは直接食道粘膜を刺激するほか、胃酸分泌を促すなど逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。

 食道と胃の接合部が緩くなり、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流しやすくなる病態を食道裂孔ヘルニアといいます。肥満者は特に食道裂孔ヘルニアになりやすく、腹圧の上昇も加わり逆流性食道炎を起こしやすいのです。

 糖尿病や高血圧症、脂質異常症といったメタボリックシンドロームを代表する疾患は、肥満に関連するのはもちろんのこと逆流性食道炎とも密接に関連しています。糖尿病の患者さんでは、肥満による腹圧上昇に加えて自律神経が障害されることで消化管の運動が低下し、逆流性食道炎を発症しやすいようです。

 このように、日本の食習慣の欧米化とそれに伴う肥満は生活習慣病の増加をもたらし、逆流性食道炎もこれらの生活習慣病と密接な関わりを持っていると考えられます。また決して頻度は高くありませんが、逆流性食道炎が発がんのリスクとなる可能性もあります。

 日々の運動や食生活を見直し、地域の検診や人間ドックで日々の健康チェックを行うとともに、定期的に胃の内視鏡検査を受けて、胃だけでなく食道の健康にも注意しましょう。

(西彼時津町野田郷)しらいし胃腸科外科クリニック副院長  白石 良介

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