>>健康コラムに戻る

2017年5月1日掲載

「前立腺肥大症の手術」

 
 前立腺肥大症の治療は運動、飲水、嗜好(しこう)品などライフスタイルや持病、内服薬、排尿状態をチェックし、生活指導を行います。これである程度の症状が緩和されます。

 しかし中等症以上では、薬の内服も同時に始めます。複数の薬を組み合わせる場合や漢方薬、植物製剤などを処方する場合もあります。頻尿や尿失禁を改善する薬を併用することもあります。

 ごく軽症の人を除き、基本的には手術しない限り、一生涯薬を飲み続けることになります。重症になると、血尿や尿路性器感染症を繰り返したり、ぼうこう結石ができたり、残尿が増えたりします(100ミリリットル以上)。さらにぼうこうにたまった尿をほとんど出せなくなる尿閉や、腎機能低下の状態になってきます。

 このような重症例や、薬の効果が弱い場合、薬を長期間服用したくない患者さんには、手術をお勧めします。前立腺肥大症は命に関わる病気ではないので、全身状態の比較的いい患者さんに対して手術を行います。持病も少なく元気であれば85歳の患者さんでも手術できます。

 開腹手術はほとんどしません。ペニスの先端の外尿道口から内視鏡を入れて行う経尿道的手術が一般的です。経尿道的前立腺切除術(TURP)が最も標準的な術式で、内視鏡下に電気メスで前立腺を削り尿道を広げます。手術時間は1〜2時間、入院期間は1〜2週間です。

 最近では、入院期間が短く、出血や痛みが少ないなど体に負担の少ない低侵襲手術もあります。代表的な手術を二つ挙げると、まず経尿道的にホルミウムレーザーで前立腺の肥大した部分をくりぬくホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)があり、根治性が高く治療効果が高い手術です。以前であれば開腹手術をしていたような巨大なものでも手術可能です。手術時間は1〜2時間、入院期間は1週間程度です。

 次に経尿道的に緑色レーザー光で前立腺を蒸散し尿道を広げる光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP)があります。より低侵襲な手術ですが、巨大な前立腺肥大症には不向きです。手術時間は1〜2時間、入院期間は約5日です。レーザーなどの特殊な設備は限られた医療機関にしかないので、手術を希望する際は注意が必要です。

 排尿のため睡眠中に目が覚める夜間頻尿の原因は、前立腺肥大症だけではありません。高齢になると睡眠中に作られる尿量が多いことや、睡眠が浅いことなど複数の要因が絡んでいます。手術や薬で治療を行ったとしても、軽くはなるものの完治しないことが多いです。

 重症にもかかわらず、持病や高齢などを理由に手術できない時は、尿道や下腹部からぼうこうにカテーテルをずっと入れておかなければならないこともあります。患者さん自身やご家族が1日数回、尿道からカテーテルを挿入して尿を出す、間欠導尿を行うこともあります。

 前立腺肥大症と似た症状を来す前立腺、ぼうこうの病気はいろいろあります。一度は泌尿器科などでの受診をお勧めします。

(長崎市茂里町)長崎原爆病院泌尿器科部長  鶴ア 俊文

>>健康コラムに戻る