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2017年5月15日掲載

「月経の異常あれこれ」

 
 月経(生理)はなぜ毎月あるのでしょう。トイレにまめに行かないといけないし、生理痛もある。面倒くさいと思いますね。

 子宮内膜がはがれて腟(ちつ)から排出されるのが月経です。子宮内膜は受精卵を育てるベッドです。妊娠が成立しないと、ベッドを新しくするために古いベッドを排出する大事なものなのです。

 月経周期の異常はさまざまな原因で生じます。やせ、肥満、薬剤の服用、ストレス、激しい運動、甲状腺機能異常などにより、月経に関与するホルモン異常を来します。長い間月経が来ない希発月経、頻繁に月経が来る頻発月経などがあります。

 どちらにしても排卵していない可能性があるので、心配な人は基礎体温の測定をお勧めします。長く月経が来ない状態が続くと、子宮内膜がんになりやすいので、放っておくのはよくありません。骨の成長する青年期に無月経が続くと、将来骨粗しょう症も起こりやすくなります。妊娠の可能性のある人は、妊娠の確認もしておきましょう。頻発月経も長い間放っておくと、慢性的な貧血を引き起こします。どちらもホルモン療法で改善できます。

 月経量が多いものを過多月経といいます。貧血などで日常生活に支障を来す場合には治療を行います。原因で多いのは、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープです。まれに子宮内膜がんもあるので検査が必要です。

 原因不明の過多月経も多く認めます。これには経口避妊薬(ピル)や、プロゲスチンというホルモンを放出して血液量を減少させる特殊な避妊リング、止血剤が有効で、どれも保険適用です。

 月経に伴う月経痛は多かれ少なかれ誰しも経験があると思います。日常生活に支障を来す場合は月経困難症といいます。悪心や嘔吐(おうと)を伴って、時に意識を失う人もいます。子宮内膜症や子宮筋腫などが原因としてありますが、子宮が未熟であること、痛み原因物質が過剰に産生されることでも生じます。

 通常は鎮痛剤や鎮痙(けい)剤の内服で落ち着くのですが、それでも毎回月経のたびにひどい痛みがある場合には、ピルを周期的に投与するとかなり軽減するようです。漢方薬もしばしば有効で、どれも保険適用です。

 以上、月経の異常について簡単にお話ししました。いろいろな病気が隠れていることもあり、ちょっと調子が悪いというときに早めに婦人科にご相談ください。

 余談ですが、ピルに拒絶反応を示す人が結構います。ピル=避妊というイメージがそうさせているのでしょうか。近年は避妊目的より、月経異常に対する治療薬として用いられる方が多いように思います。月経量を少なくし、月経痛が軽くなり、月経不順もなくなります。月経前症候群やにきび、多毛症の治療にも用いられます。

 治療に用いる場合は保険が適用されることも多いです。血栓塞栓(そくせん)症など重篤な副作用が生じる可能性もありますが、きちんと医師の注意を守って服用すれば安全な薬です。いつも月経に悩まされている人にとっては、ピルは救世主となり得るでしょう。

(島原市北安徳町)なおみレディースクリニック院長  浜口 直美

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