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2017年7月3日掲載

「花粉症と口腔アレルギー症候群」

 
 花粉症は、体内に入った花粉に対して人間の体が起こす異物反応です。皆さんご存じのように、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、涙という症状になり、生活の質が低下してしまいます。

 2008年に行われた全国的な有病率調査では約4割の人がアレルギー性鼻炎と答え、花粉が原因の鼻アレルギーは3割に上ることが分かりました。約10年近くたった現在では、さらに増加しているものと思われます。

 日本では50種類もの原因花粉があり、スギやヒノキだけでなく、シラカンバ、ブナ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、ブタクサ、ヨモギなど一年中何かしらの花粉が飛んでいます。

 話題は変わりますが、果物や野菜などを食べると、しばらくして唇や舌、のどの奥がかゆくなったり腫れたりすることはありませんか。これは、原因となる食べ物が口腔(こうくう)粘膜に直接接触することで生じるアレルギー反応で、「口腔アレルギー症候群」といわれています。

 原因となる食物には、バラ科の果物(リンゴ、モモ、ナシ、イチゴ、サクランボ)、ウリ科の植物(メロン、スイカ)、バナナ、ジャガイモなどがあります。これらの食品は、花粉症の原因花粉類と交差抗原性があることが知られています。交差抗原性とは、アレルギーの原因となる物質が共通して含まれていることです。花粉症の患者さんに症状がみられることが多いと考えられています

 症状は原因となる食べ物を摂取した後、約15分以内に唇や舌、のどがかゆくなったり腫れたりします。多くの場合はそれで終わるのですが、じんましん、目や鼻の花粉症のような症状、吐き気、腹痛、下痢などの消化器症状が出ることもあります。ぜんそく発作やショックに至ることもあります。ただし、原因食材が熱や消化液で活性化を失うものが多いため、重症化するまでには至らないことがほとんどです。

 ゴム手袋の原料であるラテックスも、アボカド、クリ、バナナ、キウイなどと交差抗原性があり、口腔アレルギー症候群の一類と考えられ、「ラテックス・フルーツ症候群」ともいわれています。職業上ゴム手袋を使用する場合には注意が必要です。

 花粉症の病歴がある人で、該当する果物や野菜を食べた後に前述のような症状がみられれば、臨床的に口腔アレルギー症候群と診断されます。血液検査や皮膚反応などでそのアレルゲンが確認されることがありますが、検出できないことも少なくありません。

 発症を完全に予防できる治療法はまだなく、原因と考えられる食物の摂取を避けることが唯一確実な予防法です。熱を通すことで食べられることもありますが、症状の現れ方にもよります。耳鼻咽喉科や皮膚科など、アレルギーを扱う医療機関を受診し相談されることをお勧めします。

 口腔アレルギー症候群は聞きなれない病名かもしれませんが、気に留めていただけたら幸いです。

 ◆鼻の日講演会 8月19日午後2時、長崎市栄町の市医師会館。鼻の日(8月7日)にちなみ、「アレルギー性鼻炎」などについて市民向け講演がある。申し込み不要。同市医師会(電095・818・5511)

(長崎市滑石3丁目)うらべ耳鼻咽喉科医院院長  占部有人

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