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2017年7月17日掲載

「緩和ケア」

 
 がんは、日本人の死因で最も多い病気です。現在、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっています。このようにがんは身近な病気になりました。病気に関わる心配事は、一人で悩まず相談することが大切です。

 緩和ケアという言葉をご存じでしょうか。日本緩和医療学会の説明文によると、緩和ケアは「重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体(からだ)、心などさまざまなつらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」とされています。

 患者さんだけでなく、ご家族も不安やさまざまな悩みを抱えています。悩みが互いに影響してさらに深刻になってしまうこともあります。総合的なサポートを行うために、緩和ケアではチームで活動を行っています。

 緩和ケアに携わるスタッフは、医師だけでなく看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、リハビリ専門職、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士など多くの職種でチームを組みケアを行っています。さまざまな職種が連携することでより良いケアが可能になります。

 がんと診断されると、落ち込みや悲しみを感じ、治療を受け続ける気力が失われることもあります。緩和ケアは時期を問わず早い段階からでも受けることができます。治療中であっても困ったり悩んだりしたら、まず相談することが大切です。

 緩和ケアはがん治療を行っている病院、ホスピス・緩和ケア病棟、さらにご自宅でも受けられます。それぞれの施設間で情報交換して、連携を取りながら行っています。

 ホスピス・緩和ケア病棟は「最後の場」と思っている人も多いと思いますが、決してそうではありません。現在は患者さん、ご家族の希望に寄り添い、過ごしたい場所で療養することが可能になってきました。

 自宅療養に向けて外出や外泊支援を行ったり、安心してご自宅に帰れるよう在宅医療・介護のスタッフ(在宅医、訪問看護師、薬局薬剤師、介護士など)と退院時合同カンファレンスを行ったりしています。ご自宅に帰るに当たって不安に思うことなども相談していただけたらと思います。

 がん患者さんは、がん自体の症状のほかに、痛みや倦怠(けんたい)感などさまざまな身体的症状、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験します。

 緩和ケアとは、がんと診断されたときから行う身体的・精神的な苦痛を和らげるためのケアです。長い間つらい状態が続くと、食欲や気力が落ちることもあるかもしれません。体や心のつらさを和らげることは、とても大切なことです。一人で悩まず、ぜひ相談していただけたらと思います。

 緩和ケアの相談は、各がん診療連携拠点病院のがん相談支援センター、緩和ケアセンター、治療を行っている病院の地域連携室、ホスピス・緩和ケア病棟のある病院の地域連携室、かかりつけ医、地域包括支援センターなどへご相談ください。

(長崎市出島町)出島病院 院長  北條美能留

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