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2017年9月18日掲載

「運動器の痛み」

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2013年)によると、日本人の健康に関する悩みは男女共に腰痛と肩こりが1位と2位を占めています。しかしこれらの症状は画像で異常を確認できることが少なく、運動器疾患の専門医である整形外科医でも、しばしば治療に苦労します。

 突然、肩に強い痛みが現れ動かすこともできず、痛みのあまり夜間に目が覚めるという症状の場合、エックス線写真で肩の奥にある腱板という部位が白く見えることがあります。

 これはカルシウムの結晶が腱板に付着している状態で、石灰性腱炎といいます。痛み止めなどでは効果がないことが多く、ステロイドの注射で劇的に良くなることが多くあります。

 何かを振り回したり、手や肩を打撲した後に肩の痛みが出現することがあります。肩を上げることができなかったり、上げる途中で強い痛みがある場合、磁気共鳴画像装置(MRI)や超音波(エコー)検査で腱板断裂が判明することがあり、経過によっては手術が必要となることがあります。

 頸椎(けいつい)椎間板ヘルニアという疾患は首から肩に行く神経が首のところで圧迫され、肩に問題はなくても痛みやしびれが出現します。肩の痛みの原因が画像で診断できるのはおおむねこの三つ程度で、ほとんどは原因の特定が難しくなります。

 同様に腰痛もエックス線検査やMRI、コンピューター断層撮影(CT)検査などをしても80%は原因の特定ができないといわれています。このため、ちまたでは姿勢が悪いからとか骨盤がずれているからなど、医学的根拠に乏しい情報があふれ、混乱する人もいるでしょう。

 最近、画期的な診断と治療法が注目されています。エコーを使った診断方法です。以前から腹部の検査には使われています。整形外科の分野ではあまり使われていませんでしたが、近年画像精度が著しく向上し、使われるようになりました。

 エコー検査の長所はエックス線検査のような被ばくがなく簡便で、画像を見ながら注射をすることができるので検査と同時に治療が行えるという点にあります。

 肩こりの場合、僧帽筋という背中にある筋と肩甲挙筋という筋の間が癒着することが原因となることがあります。エコーで画像を見ながら生理食塩水を注射し、お互いを?がすことで症状が軽減することがあります。

 この方法は筋膜リリースやハイドロリリースなどといわれます。腰痛の場合もエコーで見ると腰の筋肉に白くなっている部位があり、そこに注射すると症状が軽減することがあります。他にも膝関節や肘関節などにも応用されています。まだ解明しなければならない点もありますが、新たな治療法として今後も発展していく可能性があります。

 エックス線検査やMRIなどで異常がなく、鎮痛剤でもなかなか症状が軽くならない場合は、近くの整形外科でこの方法を受けられてはいかがでしょうか。ただし、まだあまり普及していないので事前の確認をお勧めします。

(諫早市永昌町)にしむらクリニック整形外科院長  西村 誠介

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