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2017年10月16日掲載

「アトピー性皮膚炎」

11月12日の「皮膚の日」にちなみ、長崎臨床皮膚科医会は今年も11月11日午後3時から、長崎市栄町の市医師会館で市民公開講座「みんなで学ぶ皮膚の病気」を開きます。今年のテーマ「アトピー性皮膚炎」について、二つの講演内容を簡単に紹介します。



 ◎原 肇秀 (長崎大学病院皮膚科・アレルギー科講師)

 アトピー性皮膚炎は、湿疹の中の代表的な病気で、慢性的にかゆみを伴う皮膚症状を繰り返すことを特徴とします。ありふれた病気なのですが、アトピー性皮膚炎に関する情報は入り乱れています。診療の現場では、皮膚症状が長引き、生活の質の低下や社会生活に支障を来している患者さんも見受けられます。

 このような現状の背景としては、病因が多因子であるため治療には複数の要素を考慮する必要があることが挙げられます。さらに医師の間でも考え方の違いがあること、治療の中心が外用療法で患者さん本人や保護者の裁量が加わりやすい不確実な側面をもつこと、ステロイドなどの抗炎症外用剤の使用を嫌がる患者さんがいることなどが考えられます。

 日本皮膚科学会は診療ガイドラインを作成し、治療方針の目安や治療の目標など、診療の道しるべを示しています。治療の目的は、遺伝的な素因を根本的に治すことではなく、皮膚症状を上手にコントロールすることによって、社会生活や学校生活、家庭生活に支障のない状態に持っていくことにあります。

 今回の講演では、ガイドラインに沿ったアトピー性皮膚炎の正しいとらえ方と、日常生活の注意点を中心にお話したいと思います。

 ◎竹中 基 (長崎大学病院皮膚科・アレルギー科准教授)

 日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016」では、基本となる三つの治療方法を(1)薬物療法(2)皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア(3)悪化因子の検索と対策−としています。中でも、皆さんが最も知りたいのは、薬物療法ではないかと思います。

 一言で薬物療法といっても、使用する薬剤には外用薬と内服薬があります。外用薬にはステロイド外用剤、皮膚の免疫系の働きを調整するタクロリムス軟膏(こう)、保湿剤とあり、内服薬も抗アレルギー剤とシクロスポリン(免疫抑制剤)があります。

 それぞれの特徴を踏まえて的確に使用することが、治療効果を上げるのみならず、副作用を防ぐ意味でも重要になります。内服薬が飲まなければ効かないのと同様に、外用剤も適切な方法で十分な量を外用しないと、効果は出てきません。

 アトピー性皮膚炎は一朝一夕に良くなる病気ではありません。年単位で、長期に治療を続ける必要があります。その間、悪化することもあり、辛抱強く治療を続けることが重要です。今回の講演では、正しい外用・内服治療について、スキンケアも含めてお話したいと思います。

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